ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER

「恋人や移籍ゴシップより面白いはずだ」オシム元日本代表監督が語った“サッカーメディアへの期待”「深く語る必要が…そういうわけで、ありがとう」

posted2026/08/09 06:01

 
「恋人や移籍ゴシップより面白いはずだ」オシム元日本代表監督が語った“サッカーメディアへの期待”「深く語る必要が…そういうわけで、ありがとう」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

イビチャ・オシム元日本代表監督の言葉は、SNSやネットメディア全盛となった現代にも普遍性を持つ

text by

田村修一

田村修一Shuichi Tamura

PROFILE

photograph by

Takuya Sugiyama

 フットボールジャーナリストの田村修一さんが2026年7月29日、がん闘病の末に68歳で逝去しました。イビチャ・オシムとフィリップ・トルシエという2人の元日本代表監督と対話し、日本サッカーの発展を願い続けたその功績に敬意を称し、2011年から2015年まで連載したメールマガジン『オシム問答』から、膨大な記事の一部を特別に公開します。

移籍や恋人ばかりを追いかけずに

(※編集註:本記事は2011年3月21日配信の第1回をベースにしています)

オシム:サッカーは今やチェスのようになろうとしている。チェスではテンポを失うとゲームも失う。相手に追いつくことができない。一手でも間違えると回復は不可能だ。サッカーも愚かなミスから失点すると、残りの試合のすべてをそのカバーに費やさねばならず、さらに失点を重ねてしまう。最悪のパターンだ。だからこそ、君らのマガジンもその方向で仕事を進めて行くべきだ。

 移籍や選手のゴシップなど、興味本位の記事ばかりを書くのではなく、教育的な面も十分に配慮する。選手がどんな車に乗って、誰を恋人にしたかばかりを追いかけずに、より高い所に目標を定めたほうがいい。深い分析と考察とを目指すべきだ。そうすれば読者もまた、さらなる興味を掻きたてられる。

ADVERTISEMENT

 特にヨーロッパの専門家の説明は、有効であるかもしれない。監督であれ誰であれ、ふたつのチームの間のエキスパートが細かな違い、微妙な差異を説明する。その小さな差が試合の勝敗を分ける。誰がゴールを決めたかだけが重要ではなく、誰のミスでこのゴールが生まれたのか、どんな背景があって生まれたのかを知ることが同じように重要だ。

 君らがこれから作っていくマガジンの、それが目的であると私は思っている。

サッカー大国には優れたメディアがある

――しかしこのメルマガは、まさにあなたのメルマガであるわけです。

オシム:だから私たちはこうして頻繁に話し合っているのではないか。われわれは決して同じ基準で試合を見てはいない。それぞれが自分の見方で試合を見ている。そこには違いがあるわけで、もし誰もが同じ見方をしていたら、面白いことなど何もない。その違い――サッカーの見方や考え方の違い、サッカーに対するイメージの違いこそがとても興味深い。説明にしてもそうで、それぞれが違う。だからこそもう少し努力をする必要があるし、もう少しサッカーに献身するべきだと思う。

【次ページ】 サッカーを深く語る雑誌やメディアは必要だ

1 2 3 NEXT
#フィリップ・トルシエ
#イビチャ・オシム
#ヨージップ・カタリンスキー
#アマル・オシム

サッカー日本代表の前後の記事

ページトップ