球道雑記BACK NUMBER
外角低めのストレートを、もっと!
平野佳寿と鈴木郁洋の“頑固力”。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/10/11 10:30
9月下旬には、日本ハムの武田久が持っていたパ・リーグの年間最多HPの記録を塗り替えた平野。オリックスのシーズン終盤の伸びでも、平野の貢献は大きい
“鉄腕”の男でも「球速ほどボールに伸びがなかった」。
翌日の試合で、平野がブルペンでアップする姿は見られなかった。
66試合登板で自己最多記録更新中の平野に50球も投げさせたのだ。さすがの“鉄腕”に疲労が残っていたとしても不思議じゃなかった。
「また明日、そりゃあ行くよ。行けると思ったら平野行くよ。それは当然やからね」
前日の囲みで岡田監督はそう語っていたのだが、結局それはしなかった。
7回裏、逆転したオリックスのマウンドには先発して中3日の木佐貫洋があがっていた。いつもなら、ここは香月良太のはずであり、平野もマウンドに上がる場面だが、岡田はあえて木佐貫をマウンドに送ったのだ。
そこで気になったのが前日、試合後に西武の各打者が語っていた平野の状態についてだった。
「球速ほどボールに伸びがなかった」
西武ナインがまるで口裏を合わせたかのようなコメント。
実際に平野は初戦の登板時に秋山に10球、上本に8球も粘られている。このふたりに対して、鈴木は相手の意識をそらすために変化球を間に挟んだと話していたが、そこがなんとも気になる話ではあった。
平野の疲労を理解した上で、同じ投球内容を要求した鈴木。
平野の異状はオリックスベンチも、ボールを受けていた鈴木も感じていたことだろう。だからこそ、1勝1敗で迎えた3戦目、平野が今季67試合目のマウンドに上がったとき、どんなピッチングをするのだろう、鈴木がどんな配球をするのだろうと非常に興味深かった。
しかし、配球は前々日と何も変わらなかった。
いや、あえて変えなかったと言っていい。鈴木は再び、ミットを外角低めに構え、平野もそこをめがけて目一杯投げた。
しかし、先頭の中島裕之に投じたボールは内角高めへすっぽ抜ける。この1球を見ても平野の疲労は感じ取れた。西武ベンチは甘く入る真っ直ぐだけに照準を絞っていた。ボールはふたたび鈴木のミットから大きくはずれていく。
結局、四球で中島は一球もバットを振らずして出塁することとなった。続く中村剛也に対しても、平野の体は言うことを聞いてくれないままに、死球を与えてしまう。