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<F1鈴鹿伝説> セナと過ごした最後の鈴鹿。 ~今宮純、19年目のレース秘話~ 

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今宮純

今宮純Jun Imamiya

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photograph byFujio Hara

posted2011/10/08 08:01

<F1鈴鹿伝説> セナと過ごした最後の鈴鹿。 ~今宮純、19年目のレース秘話~<Number Web> photograph by Fujio Hara

グリッド予想で見せたセナの優れた分析力。

 マクラーレンもこの年からハイテク化を急ぎ、ある程度いいレベルまではきていたが、セナは高速コーナーでの空力アンバランスをずっと訴え続けた。だが、強力なワークス・ルノーRS5・V10と非力なフォードHB・V8のエンジンの差はあまりに大きい。'92年までホンダに頼ってきたマクラーレンもセナ自身も、こればかりはどうしようもなかった。130Rについて彼がやや自信なげに、それでも6速アクセル全開の可能性を口にするとき、ホンダを失った寂しさが直に伝わった。

「ポールポジション? それはウイリアムズのどちらか……、やっぱりプロストだろう。デーモン・ヒルは初めてのスズカだからね。ぼくらはその次につけたい。むろんミカ・ハッキネンよりぼくが上でね。ベネトンはぼくらの後ろさ(笑)。希望としては自分がヒルを喰ってフロントロー、それでいいだろ(笑)。ところで今週の天気はどうなの?」

 ここで聞いたセナ自身の'93年日本GPグリッド予想は的中する。ジョークっぽく語りながらも、彼はきわめて現実的に彼我の戦力を分析しており、それをさらりと筆者にレクチャーしてくれた。アイルトンには個人的に何度も色々なことを教示してもらったが、このグリッド予想話は忘れられないうちのひとつ。

最速最強マシンを凌ごうと片道燃料で“特攻”していく。

 金曜午前10時フリー走行1回目、いきなり重大なトラブル発生。プロストのルノーが3周でエンジンブローして最下位。セナもオイル漏れで13位。トップには初めて鈴鹿を走るヒルが上がった。

 午後1時から予選1回目。エンジン交換したプロストが案の定リードしていき、1分38秒587で暫定PPをとる。'92年に活動を休止して以来2年ぶりの鈴鹿だが、土曜フリー走行2回目は1分37秒984、予選2回目は1分37秒154を叩きだし、プロストは年間13回目、通算33回目の“最後のPP”を守った。セナは1分37秒284で、0.130秒が分厚い壁となった。マシン戦力からすれば2位は健闘でもセナにすれば負けは負けだ。

「まるで片道燃料の“特別攻撃隊”じゃないか」

 予選アタックでたった1周、5.864km分の燃料だけしかセナは積んでいなかったことを後で聞かされた。1kgいや100g単位まで削れるだけ削り、最速最強マシン攻撃に彼は向かって行った。アタック後にガス欠ストップ、敵艦轟沈はならなかった――。

 PPプロスト、2位セナ、3位M・ハッキネン、4位M・シューマッハー、5位G・ベルガーまでが0.468秒間隔の接戦グリッドを形成。6位ヒルは鈴鹿の洗礼を浴び、この年のワーストグリッドに落とされた。セナに続けと、M・アンドレッティに代わってチームメイトに起用されたハッキネンがまだ2戦目ながら好走。ベネトンの若きエース、シューマッハーも激走し、「新世代力」を鈴鹿でアピール。日本勢3人を含んだ、見れば見るほど味がある、多士済々のグリッドメンバー24人ができた。

レースはプロストの読みどおりに進むかと思われたが、北西の風に運ばれた雨雲がサーキットを徐々に濡らし始める――。セナにとって、この地で初の世界王者を決めた'88年以来、5年ぶりとなる日本GP優勝を遂げたレースを、当時の空気感と共に再現する。
つづきは、雑誌「Number」788号、もしくはNumberモバイルでお読みください。
<永久保存版> F1鈴鹿伝説。~名勝負はセナとともに始まった~
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