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西岡利晃がアメリカで大スターに!?
ラスベガスの聖地で勝った意味とは。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byGetty Images
posted2011/10/03 12:20
西岡は得意とする左の強打を多彩に打ち分けマルケスを圧倒。40勝中36KOを誇る元2階級制覇王者を3-0の判定で破った
アメリカのリングで勝ち続けることこそが「真の世界一」。
時代によって浮き沈みがあるとはいえ、アメリカが世界一のボクシング大国であることに異論はないだろう。1試合で10億円以上を稼ぐボクサーが存在し、ビッグマネーを求めて才能ある若者たちが世界各地から集まってくる。レベルの高い争いが繰り広げられるから、世界中のファンが会場に足を運び、有料テレビ放送の料金を支払う。だからこそ高額のファイトマネーも用意できる。
さらにアメリカでは、統括団体の思惑を超えて、ファンの最も望む好カード、言い換えれば本当の世界一を決めようという意欲的なマッチメークが数多く組まれている。
ボクシングではワールドカップのような世界大会が存在しない以上、アメリカのリングで戦い続け、結果を残すことが真の世界一に近づく最も有力な方法なのだ(大金をはたいて有力選手を日本にバンバン呼ぶという方法もあるが、今の日本の状況では経済的に不可能だ)。
大リーグにおける野茂の役割を、西岡はボクシングで果たせるか?
このような現状は広く日本の業界でも認識されている。
心の底で海外での試合を渇望しているボクサーはたくさんいる。
ところがいざ試合をしようとしても、無名の日本人(たとえ世界チャンピオンであっても)は対戦相手に指名してもらえない。見たこともない東洋人が相手では好カードにならず、商売にならないからだ。このようにして日本人ボクサーは世界で最も魅力のあるマーケットに参加できないでいた。
そこで西岡が登場するのだ。
この世界王者は'09年にメキシコへ遠征し、ジョニー・ゴンサレスというネームバリューのあるメキシカンをノックアウトで下したキャリアがあり、アメリカで名前を知られる数少ない日本人ボクサーだった。国内最大手の帝拳プロモーションは、大リーグへの道を切り開いたプロ野球の野茂英雄のような役割を西岡に託し、対戦相手に満を持してラスベガスのビッグネームを用意した。
相手がマルケスとなれば海外のファンも注目する。帝拳は数々の名勝負の舞台となったMGMグランドホテルを会場に定め、西岡の試合をメインイベントに据えた。その大一番に35歳のサウスポーは見事勝利したのである。