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大宮アルディージャvs.セレッソ大阪。
2つの“非常識”に見た欧州との違い。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/09/24 08:01
9月18日に行われた大宮アルディージャ対セレッソ大阪戦。ドリブルで切れ込むセレッソ大阪の播戸竜二を囲む大宮の守備陣。試合は両チームともに決定打を欠き、0-0のスコアレスドローに終わった
良く言えば「フレキシブル」、悪く言えば「基準が確立されていない」ということになるだろうか。9月18日の大宮アルディージャ対セレッソ大阪戦には、ヨーロッパのプロリーグでは考えられない“非常識”が2つあった。
1つ目は、試合がいつもとは違うスタジアムで開催されたということだ。
大宮は通常、大宮駅から徒歩約20分のところにある「NACK5スタジアム」(大宮公園サッカー場)でホームの試合を行っている。スタジアムまでの道のりのほとんどが商店街だからか、徒歩でもそれほど遠く感じず、とてもアクセスのいいスタジアムだ。だが今回のセレッソ戦はそこではなく、熊谷市にある「熊谷スポーツ文化公園」で開催された。
熊谷駅は、大宮駅から在来線で約40分。ちょうどドルトムント駅からシャルケの最寄り駅(ゲルゼンキルヘン駅)までの所要時間と同じだ。他のチームのホームにまで行ける距離である。
昨年はJ1と天皇杯でそれぞれ1回、一昨年はJ1で1回、大宮はこのスタジアムを使用している。
欧州ならホームスタジアム以外の試合はあり得ない!
ヨーロッパでは、スタジアムの設備がチャンピオンズリーグなどの欧州カップ戦の基準を満たさない場合、近郊のスタジアムを借りて試合を行なうことがある。だが、設備に問題がないのにホームスタジアムを変更するというのはありえない発想だ。
観客動員を上げるには、いかにスタジアムに足を運ぶことを日常の一部にできるかにかかっている。だが、試合の場をホームスタジアムから一時的にしろ変えてしまうと、せっかく作り上げたこのリズムを崩すことになりかねない。正直、いつもと違うスタジアムで開催することに、大きな違和感を覚えていた。
しかし、試合当日、実際に熊谷スポーツ文化公園陸上競技場に行くと、それが間違った思い込みであることに気がついた。
スタジアムのまわりでは武州伝統の藍染体験教室、熊谷の特産品の販売、選手のサイン会といったイベントが次々に行われ、ハーフタイムには花火、そして試合後には約300本のキャンドルが広場に並べられた。武州和牛をアピールするために、本物の牛の姿もあった。