セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ユーベの迷走が止まらない。
欧州の名門に何が起きているのか?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2010/03/05 00:00
ユーベの迷走が止まらない。欧州の名門に何が起きているのか?
3月の声を聞いても、イタリアの“貴婦人”には憂いばかりが募る。ユベントスの迷走が止まらないのだ。
昨年末、クラブは成績不振からすでにサポーターによる猛烈な抗議に晒されていた。この時点で、虎の子だった新米監督フェラーラの続投は困難視されていたが、1月のリーグ戦3連敗とイタリア杯準々決勝敗退で、ついにその命運は尽きた。特にホームでのセリエA21節で、昨季最終盤に解任した前監督ラニエリの率いるローマに手痛い意趣返しをくらったことが上層部のプライドをいたく傷つけたようだ。
ところが、“名門ユーベの後任監督候補が見つからない”という信じられない事態が発生する。本命だったヒディンク(次期トルコ代表)とベニテス(現リバプール)には、それぞれの契約問題と高額年俸をクリアできずに、あっさりフラれた。天下のユベントスを率いる将の椅子ではあるが、冬の移籍市場で戦力増強を図ったわけでもなく、負傷者は山積み。ファン感情とクラブ上層部が乖離したままの現状を見れば、この中途半端な時期に火中の栗をわざわざ拾う道理がない。
来季から大規模なチーム改造が考えられているにしても、後任の座は今季末までのつなぎ役にすぎない。経営陣は、かつての「ミスター・ユベントス」たるゾフやトラパットーニ(現アイルランド代表)まで引っ張り出そうとしたが、老体を理由にやはり体よく断られた。
ザッケローニ新監督の指揮能力には「疑問あり」の声が。
1月末になってようやく「トラゲッタトーレ(=渡し舟の船頭)」と呼ばれる損な役回りを引き受けたのは、トリノ以来3年ぶりの現場復帰となるザッケローニだった。就任会見では「ページはめくられた。不調の原因は精神的なもの。このクラブは世界で最も価値あるクラブの一つであり続ける」と豪語したが、伊紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』のHPアンケートでは72パーセント強の読者が新指揮官の能力に「疑問あり」とした。
実際に2試合を指揮した後、順位は98年4月以来となる7位にまで降下。2月最後の試合となった26節パレルモ戦では、またもホームで0対2の完敗。来季チャンピオンズリーグへ直接出場できる3位との差は勝ち点10にまで開いてしまった。
今季残りのセリエAでは、躍進著しいナポリ、パレルモ、サンプドリアと熾烈な4位争いが余儀なくされる。来季CL出場を逃すことは、出場給とTV放映権料の取りこぼしだけでなく、スポンサー料の減額見直し、クラブ株価の下落、移籍市場における選手の評価額減少などを意味する。出場の可否は、クラブ収支を 7000万ユーロ(約85億円)の幅で揺り動かすのだ。