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セビージャに移籍の指宿洋史が示した
“日本人大型FW”の新たな可能性。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2011/07/27 10:30
日本でサッカー指導者として活動してるジョアン・サルバンスに見出されて17歳にしてスペインへ渡った指宿。サルバンスは、バルセロナの元ジュニアユースの監督であった
ライバルチームの首脳陣も認めた指宿の確かな実力。
その中でもサラゴサB時代の活躍は、その後の活路を開くことになった。
空中戦に強く、敵を背負っても正確なポストプレーができ、ボールがないところの動きで決定的なスペースを陥れるプレービジョンを持つ指宿は、サラゴサBの攻撃の軸だった。その上、12ゴールを挙げる圧倒的な活躍でサラゴサBをセグンダB昇格をかけたプレーオフ進出に導いた。
サラゴサBがプレーオフで対戦したのはヘタフェBだった。ヘタフェBが最も警戒すべき選手としてマークしていたのは当然、指宿だった。
元スペイン代表でヘタフェ強化部長トニ・ムニョス氏はこう語る。
「イブスキの強さは我々にとって脅威だった。彼をどう封じるか、彼へのボールをいかに断つか。それが問題だった。だが、幸運にも彼は我々との対戦ではプレーしなかった。そのおかげで私たちはサラゴサBに勝利し、セグンダBへの昇格を果たしたんだ。イブスキについては多くのスカウトから、その活躍を聞いていた。セビージャが彼を獲得したというニュースには驚いていないよ。我々だってプレーオフで対戦した頃からトップチームに迎える候補として彼には注目していたのだから」
長身FWである指宿がスペインで評価されたことの意義。
セビージャという強豪クラブに移籍し、ついにプリメーラデビューへの挑戦権を得た指宿。スペインでプロデビューを果たし、下部リーグでの戦いを勝ち抜いて強豪クラブに認められた彼が長身FWであることは興味深い。
ドイツをはじめ、リーガ・エスパニョーラ以外のリーグで活躍する日本人選手の多くは、大きくなくともその“敏捷性”や“技術”や“献身的なプレー”を評価されて、そのリーグやチームに迎えられている。それはリーガ・エスパニョーラ以外のリーグでは、そういった能力を外国籍選手に求めていると言えるかもしれないし、スペインにそういった日本人選手が多く迎えられないことは、日本人を呼ばずともそのような役割はスペイン人選手で補うことができることを示している。
身長195cmで体の使い方が上手く、足下の技術もしっかりしているFW。そういった選手はスペイン人には少ない。指宿はスペインにおいて稀有な存在だ。それは彼がこれまでの日本人選手がスペインで得ることのできなかった評価を手にするチャンスを拡げるための重要なポイントだ。