青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
メジャーへの執着心の薄さが
証明する、石川遼の自己分析力。
~全米OP落選直後のセリフ~
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byJun Tsukida/AFLO SPORT
posted2009/05/27 12:00
石川遼は悔しがっていた。
ただし、そこに特別に強い感情が込められていたわけではなかった。ツアーで予選落ちした時と比べてみれば、むしろあっさりしたものだったかもしれない。
全米オープン出場権を逃すも「ものすごく勉強になった」。
今月25日、石川は全米オープンの出場権を懸けた日本地区最終予選に出場した。参加したのは昨年の日本やアジアツアーの優勝者、賞金ランク上位選手など31人。そのうち上位5人に本戦出場権が与えられる1日36ホールのサバイバルマッチに臨んだ。
結果は通過ラインに5打及ばずの予選落ち。ミドルパットが決まらずに苦しみ、肝心なところでティーショットのミスも出た。
ホールアウト後の会見で反省の弁を述べる石川は、「試合なのでこんな風に表現していいのか分からないけど」と前置きした上でこう言った。
「これからに向けていい練習の材料になった。自分が本当に試されるコースだったので、回っていてものすごく勉強になった」
メジャー出場を懸けた試合にぶっつけ本番で臨んだ理由。
試合を振り返る中で、メジャー行きの切符を逃したことを残念がる言葉は最後まで聞かれることはなかった。「調子はよかったのに練習でできることを試合ではできなかった」と自らの期待以下に終わったプレー内容にただただ悔しさをにじませた。
そもそもこの試合には練習ラウンドなしのぶっつけ本番で臨んでいた。大会側の都合によって指定練習日が平日に設定されたため、高校生でもある石川は学校に通う数少ない機会を優先したのである。
れっきとした試合ではあるのだから、普段のトーナメントと同様に平日に練習ラウンドすることもできたはず。だが、石川はそうはしなかった。メジャー出場を懸けた舞台でさえ、ある意味では日々の練習の一環として捉えていたのだった。
「今、目指すのはメジャーではない」と言える冷静さ。
「正直言って、メジャー出場のために今まで練習してきたわけじゃない。マスターズに出場できて全米プロにも招待されて、すごく光栄な気持ちでいますけど、去年の自分を振り返ってみても今年のマスターズに出ることを目指していたわけじゃなかった。今の自分が目指すのはメジャーではなく、今、目の前で取り組んでいることだと思ってます」
4月のマスターズに続いて8月の全米プロにも特別招待を受けて出場することが決まったが、この17歳は大志とともに理知的な判断力も合わせもっている。
「来年はこの予選に照準を合わせてピークをもってこられるぐらいに頑張りたい」
メジャーに関しては、これぐらいが現在の偽らざる気持ちのようである。