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石川遼の悩ましい5年。
~スイング改造のためのシード~ 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byJun Tsukida/AFLO SPORT

posted2009/06/10 11:00

石川遼の悩ましい5年。~スイング改造のためのシード~<Number Web> photograph by Jun Tsukida/AFLO SPORT

 5年という時間が石川遼にどれだけの価値があるのか。

 国内男子ツアーでは、日本オープンなどメジャー大会の優勝者に複数年のシードが与えられる。7日まで行われていたUBS日本ゴルフツアー選手権宍戸ヒルズでは、これまで1度もシードを取ったことのない五十嵐雄二がツアー初優勝。賞金3000万円と5年シードを獲得してシンデレラストーリーをつかんだ。 

 大会前の石川はメジャー制覇というステータス以上に長期シードに対して強い興味を示していた。

「5年はすごく大きい。やりたいことはたくさんあるし、自分が進化するために長いシードは欲しい。大きな権利を得るためのトーナメントだと思ってます」

やりたいことは、理想のスイングの飽くなき追求。

 小学生の頃からマスターズ優勝を具体的に思い描いていたぐらいだから、本人の中では5年シードを得た場合の1年ごとのテーマがはっきりイメージできているのかもしれない。

「あー、そこまではないなあ」と笑って否定したが、自らの考えをこう説明してくれた。

「やりたいことっていうのは、スイングを追求して好きなだけいろんなことにチャレンジしてみたいんです。シードを考えるとある程度は結果を出さなきゃいけないし、賞金ランクもシード圏内にいなきゃいけない。そういうことを考えながら中途半端にスイング改造をやっていくと、あまり進んでいかないかなって。今は思い切ってできてるけど、時間があればあるだけ積極的に取り組めますから」

父・勝美氏はシードによる気の緩みを警戒する。

 石川は07年のツアー初優勝によって優勝者に与えられる2年シードを獲得した。09年シーズンまで有効だったその権利は、昨年のツアー2勝目でさらに10年まで伸びた。

 選手にとってシードの有無は天と地ほどの差がある。どんな成績であっても試合出場が確約されているから石川も技術向上に没頭できる。マスターズ前にスイングの大幅改造に取り組み、再び元のスイングに回帰するという“寄り道”が許されたのもシードがあればこそ。石川の父・勝美さんは「5年もシードがあったら成長のスピードが鈍るかもしれない」と猶予期間があるがゆえの緩みを気にするが、計り知れない期待を背負いながら伸び伸びとプレーができるのは複数年シードによる庇護も一因となっている。

日本プロゴルフ選手権で獲得したい“スイングのための5年”。

 11日からは2週連続のメジャー大会となる日本プロゴルフ選手権が北海道・恵庭CCで開幕する。この大会の優勝者に与えられるのも、自由に使える5年間の貴重な時間である。

 最後に、ゴルフ以外で5年間あったらやりたいことはあるかを石川に聞いてみた。しばらく考えて返ってきたのはこんな答えだった。

「何もないかなあ。今の気分的には何もないですね」

 今はどこまでもゴルフ一直線。現状では父の不安も杞憂に終わりそうである。

石川遼

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