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バイエルンvs.ヴォルフスブルク。
クラブ幹部として実の兄弟が競い合う!?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byUniphoto Press
posted2010/02/07 08:00
ブンデスを代表するクラブを率いるヘーネス兄弟。選手としてだけでなく、GMとして君臨する兄弟は、サッカー界広しといえども、そう多くはない
兄の口利きでヴォルフスブルクのGM職を得た弟。
一方の、弟ディーターのほうはどうか。
34歳のとき、バイエルンの選手としてキャリアに幕をおろす。その後、一般企業に勤めたあと、1990年からシュツットガルトのGMに。1997年には、ヘルタ・ベルリンの副会長兼GMに就任した。そして昨年の6月に同職を退いた。ヘルタでは、イェローメ・ボアテンク(現ハンブルガーSV)やアシュカン・デジャガ(現ヴォルフスブルク)など、昨年のU-21欧州選手権優勝メンバーを下部組織から育て上げるなど、予算規模の小さいヘルタで健闘した。だが、次々と大型のスポンサー契約を結び、バイエルンに盤石の経済基盤を作り上げてきた兄の功績と比べると、ややさみしい。
ちなみに、12年にわたり在籍したヘルタを去ったのは、ヴェルナー・ゲーゲンバウアー会長と仲違いしたからだ。原因は、昨季チームが躍進した際に会長ではなくてGMであるディーターがもてはやされたことについて、会長が不快に思っていたためだとする意見もある。だが、一方では、ディーターが傲慢だったという声や「独裁者」と揶揄する者もいる。
「最近はそうでもないんだけど、弟と昔からはよく喧嘩したよ。彼は気が強いからね。たいていの場合は、僕が折れることになった」
兄のウリは、冗談交じりにそんなコメントを残している。人間性の面でも、兄には及ばないところがあるようだ。
それ故に、「ディーターはウリの陰に隠れてしまっている」と言われるのだ。
“完璧な兄と見劣りする弟”の構図は未だに変わらず。
ディーターがヴォルフスブルクのGMに就任するにあたっても、兄の口利きがあったとされている。バイエルンのメインスポンサーであるアウディは、フォルクスワーゲンの傘下にある。フォルクスワーゲンは、ヴォルフスブルクの親会社だ。アウディを経由して兄から働きかけがあったというのは公然の事実となっている。
昨年末からの、二人の船出も対照的なものとなった。
ウリ・ヘーネスが会長に就任してから、バイエルンは公式戦9連勝、負けなし。順風満帆だ。ブンデスリーガではバイエルンの優勝を予想する声が日増しに高まっており、CLの舞台でもベスト8の壁を越えられるのではと期待されている。