Column from Holland & Other CountriesBACK NUMBER
ゴタゴタ続きのフェイエ
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byPICS UNITED/AFLO
posted2005/07/11 00:00
今季のフェイエノールトのシーズンは、移籍のゴタゴタでスタートした。
事の発端は、PSVの朴智星がマンチェスターUに移籍したことだった。PSVは朴の後継者として、フェイエノールトのカルーを指名したのである。
カルーは19歳の若さで、昨季のオランダリーグで20得点をあげた。このコートジボワール出身の天才ドリブラーを獲得しようと、バレンシアやアーセナルが熱心に勧誘していた。しかし、ある理由でカルーは断り続けている。
カルーはオランダ国籍を取る手続きをしており、そのためにオランダに住み続けなくてはいけない。「オレンジのユニフォームを着たい」という夢を実現させるために、スペインやイングランドに移籍するわけにはいかないのだ。一方で、「CLに出場してみたい」という少年の頃からの夢を我慢するのも限界がある。そんなわけで、昨季CLでベスト4に進出したオランダの強豪・PSVと“相思相愛”の仲になったのだ。PSVに行けば、オランダに住みながら、CLに出場することができる。
しかし、フェイエノールトにしてみれば、ライバルチームに将来有望な若手を渡すわけにはいかない。フェイエノールトのヴォッテ・マネージャーは、プレスに怒りをぶちまけた。
「金を得るために、悪魔に心を売るつもりはない。カルーもCLに出たいなら、自分が活躍してフェイエノールトでそれを成し遂げるべきだ!」
フェイエノールトの徹底抗戦にあい、結局PSVのヴェスターホフ会長も「他のFWを探すしかない」と白旗を揚げたのだった。カルーは、今季もフェイエノールトでプレーする。
でも、これで今季のフェイエノールトが安泰になった……ということではない。この“カルー移籍志願”騒動こそが、チームの現状を象徴していた。
今のフェイエノールトは、まさに沈みゆく船だ。
キャプテンのMFホールは、ベルギーのアンデルレヒトへの移籍を希望しており、サインは秒読み段階に入っている。エースストライカーのカイトも、ニューキャッスルとリバプールからオファーを受けており、チームを去ることになりそうだ。
選手たちはフェイエノールトが、アヤックスとPSVに並ぶ“ビッグ3”でい続けることを望んでいる。だが、新監督に就任したアービン・クーマンは、「我々はアヤックスとPSVと比べたら、アウトサイダー的な存在」と発言しているのだ。補強した選手も、ボウサボーン、コレン、グリーンとオランダリーグでしか経験のない人材ばかりだ。チームが本気で優勝を狙っているとは思えない。
カルーは残ったが、上積みの期待できないフェイエ。停滞期のチームに留まるよりも、上を目指すクラブに身を置いた方が、競争は激しくなるが、個人としての成長は期待できる。小野伸二の移籍の“勝負どころ”は迫っている。