Column from GermanyBACK NUMBER
ケルンを忘れちゃこまりますぜ、ぜひ一度、観戦を。
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byAFLO
posted2005/03/11 00:00
たまには2部の試合もどうぞ。
最近私は、近々ドイツに行く予定のある人に「1FCケルンだけは見る価値があるぞ」と宣伝している。このチーム、ちょっと面白いのだ。
ラテン系ドイツ――。1FCケルンの密かな渾名である。奥寺康彦氏が在籍した80年代初期は強豪の名を欲しいままにした。リーグとカップで優勝し、チャンピオンズカップ(当時)もいいところまで進んだ。しかし、あのボルシアMG同様、無能な経営陣のおかげでアッという間に没落。最近は1部と2部を往復するエレベーターチームになっている。
1FCの「1」とは、「ケルンで最初に設立されたクラブ」の意味。伝統も実績もこの地域一帯ではトップレベル。ところがどうも、必死に頑張るとか、何が何でもというメンタリティーに欠けるのである。「その日さえ楽しければ」「ゆっくりやろうぜ」で、これはまさにラテンの気質。毎春のカーニバルで多いに盛り上がる街の雰囲気が関係しているかもしれない。
そんなマイペース・チームだが、話題がルーカス・ポドルスキーのことになると、クラブもファンも目の色を変え、実に真剣になるのだ。地元の新聞でポドルスキーの記事を目にしない日はない。誰も彼もが熱中していて、これはもうドイツ版“ルー様”状態。彼の子供っぽい面構えは余計に母性本能をくすぐるようだ。
まだ19歳。それでも付けている背番号は『10』。昨季のカップ戦は2試合で5点、昨季のブンデスリーガでは19点、2部の今季は20試合で18点と、目を見張る活躍ぶりだ。
ベテランの記者も、「ロナウドほど快速じゃないけど、ルーカスの“完全なる左足”は代表チームに絶対必要。近い将来、ドイツを背負って立つ爆発的なFWだ」と、ベタ褒めである。そうまで言わせるのだったら、これはもう“必見”ということじゃないか。
だからドイツに出かける用事のある人は、ミュンヘン、ハンブルクだけじゃなく、ケルンにも立ち寄ってほしい。すくなくとも専用ならではのスタジアムの臨場感はミュンヘン以上の迫力がある。京都と姉妹都市だけに、街の美しさも特筆ものだ。
目下の順位は2位(勝点47)。昇格できるのは上位3つだが、1位のMSVデュイスブルク(勝点48)、3位のフュルツ(勝点43)はともにケルンより試合数が1つ多い。
ところで、ケルンの歴代の名手は左利きが多い。奥寺時代はフローエがそうだった。そして今、ポドルスキーである。ボクシングじゃないけど、「左は世界を制する」のだ。
これをもっともよく分かっているのはクラブの会長だろう。そう、ドイツ最高のレフティー、あのW・オベラート(74年W杯優勝メンバー)だ。おしゃべり男の異名を持ち、発言の軽さがタマに傷だが、会長就任初年度に昇格を果たせれば、これ以上の名誉もない。
春休みに卒業旅行を計画している諸君、ぜひポドルスキーを見てきてくれ。歴史の証人になれるチャンスだぞ。