Column from GermanyBACK NUMBER
ポドルスキー争奪戦で鍵を握るのは誰?
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byAFLO
posted2006/03/27 00:00
名門の1FCケルンが2部降格の危機に瀕している。シーズン開幕当初こそ2連勝を飾ったものの、その後は第5節の勝利を最後に24節まで18試合連続勝ち星なしの状態が続き、いまや残留圏内から9ポイントも離されてしまった。残り8試合を全勝でもしない限り、2部落ちが99%確実な情勢だ。
こうなると、ケルンの超人気者ルーカス・ポドルスキーの行方が気になる。本人はプライドに賭けても2部でやるつもりはない。昨季は「1部昇格」の大目標があったおかげで2部で戦えた。しかしW杯開幕前に21歳となる彼は、ここ1年で代表チームに定着するなど、選手として大きく成長した。それが再度、2部でやっていいわけがない。
すでに昨年からバイエルンがポドルスキー獲得に手を上げている。'07年まで続く契約があるため違約金(移籍金)が発生するが、「ドイツ最高の素材」と高く評価するマガート監督と金持ちバイエルンにとってはどうという金額ではないだろう。ポドルスキーを巡ってはブレーメンとハンブルクも獲得の方針を表明している。こちらも資金面で問題は少ない。
こうなると3者の争いとなるが、状況はバイエルンが圧倒的に有利である。というのも彼らにはアディダスという強力な後ろ盾があるからだ。バイエルンの株式の10%を保有するアディダスはポドルスキーと以前から契約をかわしている。年間5万ユーロ(約700万円、プレミアは別勘定)という驚くほど安い金額だ。それをアディダスは「バイエルンに移籍したら、最低4倍に引き上げますよ」と提示してきた。
子供に好かれるキャラクター要素を持つポドルスキー。近い将来の人気爆発を予想するアディダスは、ベッカム、ジダン、バラック、カーンらと一緒に世界的なプロモーション撮影を行い、その期待の大きさを示している。
なにしろブレーメンもHSVもサプライヤーはライバルメーカーである。またバラックが来季チェルシーに移籍してしまうと、アディダスの目玉が1つ減ってしまう。ポドルスキー獲得はビジネス面からも絶対に成功させなければならないのだ。
バイエルンの現場も必死だ。マカーイに完全に限界が見えたことで、若くて強力な点取り屋を探しているのだ。マガート監督は「ウチに来てくれれば選手として大きく成長することができる。絶対に後悔しない選手生活を送ることが出来る」とラブコールを送る。
もはや戦略なきケルンで気が乗らないプレーをこのまま続ける理由はない。バイエルンへの移籍となれば地元ファンの反発は凄いだろうが、ダメチームでこのままやっていても本人のためにならないというものだ。