フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
高橋のメダルは銅以上の価値あり。
彼の勇気を日本人として誇りに思う。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byTsutomu Takasu/JMPA
posted2010/02/19 23:30
「挑んだことに後悔はしていない」と語る高橋の清々しさ。
だがそれならば高橋だって4回転に挑まずに全体をノーミスで完璧にまとめていたら、ライサチェクに負けない質の高い演技ができていたはず。そう言いたくなるのは、日本人である私の僻みなのか。北米開催の五輪だから、北米選手に甘かったという声もある。
過去2年、4回転なしの世界選手権男子チャンピオンが誕生して、全体の質の高さか、ジャンプの難易度を追い求めていくのか、議論が何度も交わされてきた。今回は、大技よりも質の高さを重視する新採点方式の特性を最大限に使ったライサチェクの戦略勝ち。それは認めざるを得ない。4回転なしとはいえ、五輪という特別な舞台で、SP、フリーをノーミスで滑りきったのは、やはり評価するべきものではある。
「4回転に挑んだことに後悔はしていない。次に向けてのいい経験になった」
すっきりした表情でそう語った高橋の潔さを、私は見習うべきなのだろう。無難を回避して、自分が納得いく演技を追求した選手が私たちの国のチャンピオンであることを、日本人は誇りに思うべきだ。高橋の銅メダルには、銅以上の価値がある。私にはそう感じられた。