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春のセンバツにスター候補の逸材が!
一二三慎太は菊池、今村を超えるか。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph bySPORTS NIPPON
posted2010/03/01 10:30
2009年11月の明治神宮大会で強豪・帝京を5安打完封した一二三慎太のピッチング。185cm、84kgの恵まれた体格を持つ本格派右腕
センバツの開幕までいよいよ1カ月を切った。昨年春の甲子園を沸かせた今村猛(清峰→広島)、菊池雄星(花巻東→西武)のような逸材が今年はいるのか。ずばり、凄い投手がいる。それは一二三慎太(ひふみ しんた/東海大相模)だ。
ストレートはMAX149キロと速いが、それだけが突出していない。変化球は縦割れスライダー、フォークボールに、ナチュラルシュートを意識的に操るなど多彩で、制球もすぐれている。昨年秋の明治神宮大会準決勝では、強力打線の帝京を5安打完封に退け、四死球はわずかに2つという精密さ。
左肩の早い開きがなく、ストレートと変化球を同じフォームで投げ分ける完成度も素晴らしく、欠点らしい欠点が見つからない。斎藤佑樹(投手・早稲田大)をはじめとする大学生の逸材が揃う今ドラフトでも、ドラフト1位は間違いないと思わせる大物感は昨年同時期の今村猛をはっきり上回る。
昨年春の今村もドラフト1位を確信させるピッチングを見せたが、唯一物足りなかったのが力を抜いたボールを投げるときの腕の振りのゆるさ。一二三も緩急を操るが、同じフォームで強弱のアクセントをつけるので、打者からすれば昨春の今村より攻略は難しいはずだ。今村は高校卒ルーキーにして、即戦力の活躍が期待される完成度の高さを誇っている。その今村と「同年齢のとき」という前提ではあっても、一二三のほうが上と言っているのである。期待してほしい。
昨夏優勝校・中京大中京の磯村捕手は強肩強打が魅力。
野手は、昨年夏の選手権で中京大中京のホームを死守した磯村嘉孝(捕手)に期待が集まる。センバツでは5番左翼手でフル出場し強打が印象に残ったが、遠投110メートルとも言われる強肩の片鱗は見えなかった。それが、夏になると印象が一変する。
5番捕手としてフルイニングに出場し、堅実なキャッチングとともにスライダーを駆使する堂林翔太を外角主体の巧みなリードで決勝まで導き、さらに盗塁を阻止する二塁送球では超高校級レベルの1.88秒を日本文理戦で記録、「110メートルの強肩」をみごとに実証した。
バッティングは昨年春から見ごたえがあった。
'09年センバツ(3試合) 打率.500、打点1
選手権 (6試合) 打率.350、打点8、本塁打2
選手権の2本のホームランは準々決勝の都城商戦、準決勝の花巻東戦で放ったもので、大舞台で力を発揮できる精神的な強さにまず魅かれる。技術的にはミートポイントが捕手寄りなので、ボールを普通の打者より長く見られるのが最大の長所である。このポイントでもスイングが窮屈にならず、内側からバットが出る“インサイドアウト”をものにしているのだから非凡である。
開幕は3月21日。2人の逸材に是非目を止めてもらいたい。