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まだまだ動くスペイン移籍市場。 

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鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2005/06/17 00:00

まだまだ動くスペイン移籍市場。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 イタリアでは、10年ぶりにジェノバがセリエAに戻ってきた。あぁ、カズがバレージに鼻を折られたのは、もうそんなに前のことなのか。審判のコッリーナさんもセリエAの規定である45歳の定年を迎えた。もう、そんな歳か。フランスでは、ギー・ルーが44シーズン率いてきたオーゼールの監督を辞める決意をする。彼は17歳のカントナを知っている。というか、デビューさせた人だ。もう、66歳。ギネスものだ。

 新シーズンに向けて、スペインもいろいろなことが決まりだしている。なかでも、現役を引退する選手が相次いだ。「もう、引越しをする必要はないみたいだね」というのは、バルセロナで9年、アトレティコ・マドリーで3年プレーしたセルジ。これで、クライフのドリーム・チーム時代を知る選手は、カタールでプレーするグアルディオラだけになった。わからないもので、最も貧弱で、体力もなさそうだったグアルディオラが一番長持ちしている。カタール・リーグは、一流選手が最後に稼ぐ場所という意味でひと昔前のJリーグに似ているなどと言われているが、それだけにプレッシャーもなく、居心地がいいのか。

 イエロにカルピン、マウロ・シルバ、フランもスパイクを壁にかけた。一方、カルボーニのように40歳で現役を続ける元気なオジさんもいる。未成年の選手とは親子ぐらいの年の差だ。漫画『あぶさん』のフットボール版も可能といえば可能だ。

 さて、気になるのは移籍マーケットの動向だ。ホアキン獲得へという噂が流れたFCバルセロナだが、これは毎年ありがちな、ただの嫌がらせだろう。お互いの交渉を困難にしようとレアルもバルサもそれぞれが横槍を入れたりする。エスケーロとファン・ボメルを手に入れたバルサに、アンリは無理な話だけれども、カタラン人のルケならイケる。でも、ラ・コルーニャがそう簡単には譲りそうもないか。「もう一度、エトーにゴールを決めさせたい」とルケは古巣マジョルカでの旧友コンビを再び望んでいる。

 フィーゴは罰が当たって当然だ、というのはカタラン人。バルサからレアルに移籍して5年。今度はレアルにも愛想をつかされた。でも、オファーは絶えないようだから路頭に迷うことはない。可哀想なのが、オーウェンか。地味ながらも、短い出場時間でそこそこゴールを決めてきたワンダー・ボーイも放出されそうだ。「レアルが出て行けというなら、出て行くまで」と、本人はあっさりしている。彼には母国イギリスの地がいいのかも。

 そんなレアルは困っている。家を掃除して待っているのに待ち人は?という雰囲気だ。ロビーニョとの交渉がどうも難航している。「レアルに行きたい」というロビーニョの声も聞こえてくるが、「2006年のワールド・カップが終わるまではサントスから出さない」なるクラブの声も響く。そうなると、レアルの本命は誰なのか。ホアキン、レジェス、セルヒオ・ラモス、エメルソンetc……。最近ではバラック(バイエルン)とバプティスタ(セビリア)の名があがっている。もう、所構わず気になる選手の代理人にコンタクトとしているみたいだ。ソラリに生え抜きのグティも売りに出すとまで聞こえてくるから、大幅に入れ替える覚悟でもあるのだろうか。それなら、ルイス・エンリケのようにグティをバルサに迎えればいい、というのはまたもカタラン人だ。

 チャンピオンズ・リーグ優勝で資金が潤ったリバプールへ、さらにレアルの選手が流れていくことも考えられる。すでにレイナ(ビジャレアル)とミゲル・ロケ(レイダ)の2人のスペイン人を得てはいるが、ベニテスはレアルのコーチだったこともあるから、ツルのひと声であっさり第2のモリエンテスが決まるかもしれない。まだ16歳のロケを加えて、スパニッシュ・リバプールは6選手となった。プレミアでは出場選手だけでなく、ベンチ入りの選手まで全員が外国人で埋まったクラブもあるというから、この際、11人スペイン人という試みも悪くない。成功すれば、そのままスペイン代表としてドイツへ行けば、なんて。

 ところで、ラ・コルーニャはイルレタを解任して、セビリアを躍進させたカパロスが監督に就任する。アトレティコにはカルロス・ビアンキ、バレンシアにはキケがそれぞれ決まった。キケはレアルのユースで監督経験があるとあって、バレンシアは彼にベニテスの再現を願っているのが、丸見えだ。しかし、バレンシアには、さっそく問題が起きた。クライフェルトをニューカッスルから獲得できたまではよかったが、ドクターチェックをしたところ、事態は思わぬ方向へと転がっていく。左ひざが故障しているとの診断。もう、契約した後のことだった。使い物になるのかどうか。答えは6月末に出る。

 忘れちゃいけないのは我らが大久保。ここにきてマジョルカとの契約更新が決まった。どのクラブも、バケーションを楽しんでいる場合ではなさそうだ。今シーズンの移籍マーケットはまだまだ動く気配が漂っている。

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