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広島ブラウン監督の奇策成るか!?
“夢のスタジアム”でCS進出へ。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2009/09/18 11:33
広島東洋カープは“1円”に支えられている。
2004年、広島ファンの知人が嬉しそうにこう語っていた。
「1000円だよ1000円。募金に1000円も出したなんて生まれて初めてだよ」
この年の11月から開始された「たる募金」は、地元・広島のみならず東京をはじめ全国へと広がった。
それは1円かもしれないし10円、100円、1000円、1万円を超えるかもしれない。自身も、東京にある広島のアンテナショップに設けられた樽に5円を委ねた。
カープにご縁がありますように……と。
と、そのように心あるファンたちがカープのために寄付した「円」は、チームと人を結ぶ「縁」となった。今年から本拠地となるマツダスタジアムは、カープを愛する人たちの手によって生まれたもの。「総額1億2501万5886円」という数だけでは計り知れない夢が、このボールパークにはある。
自分たちの“夢の球場”にかけるファンの思い。
本拠地となった「ファンの夢の球場」で、広島は熾烈なクライマックスシリーズ争いを演じている。一時は、3位とのゲーム差が最大13もあったが、16日現在で2.5ゲーム差と肉薄している。順位こそ5位だが、ファンとの絆によって誕生した新球場で、広島は期待に応えるペナントレースを展開しているといっていいだろう。
極端な話、1敗も許されない状況ではあるが、特に今日18日からの6連戦は絶対に落とすことはできない。3位・阪神、4位・ヤクルト(16日現在の順位)との各3連戦。ここで負け込むようなことがあれば、クライマックスシリーズ進出は、事実上、破綻してしまう。最低でも両チームに勝ち越すか、6戦を4勝2敗で終えたいところだ。
昨年のちょうど今頃“市民球場”最後の夢が失速した。
広島には苦い経験がある。
それは昨年の、ちょうど今ぐらいの時期だった。9月19日、広島は3位に浮上した。広島市民球場の最終年、クライマックスシリーズ進出、果ては日本一へ向け、球場へ駆けつけたファンは大いに期待を膨らませた。ところが、その後に失速。ペナントレース終盤まで粘りを見せたものの、結局、借金1の4位でシーズンを終えた。
同じ轍を踏まないために、そしてファンの期待に応えるために、今年は補強期限ギリギリの7月31日まで調査を進め、マクレーンとフィリップスをシーズン途中で獲得するなど、Aクラス進出を目指し球団もバックアップ。指揮官のブラウン自身も、監督としては史上最多となる8度目の退場劇を演じるなど、闘争心が薄れることはない。