Column from GermanyBACK NUMBER
移籍するバラックと、スポンサー企業の思惑
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byAFLO
posted2005/12/12 00:00
今季で契約が切れるミヒャエル・バラック。バイエルン・ミュンヘンは何とか彼をチームに残留させようと必死の交渉を行なってきたが、年次総会を前に両者の話し合いは完全に決裂。バラックの引き留めに失敗した会長、GMとも、「もはや打つ手は尽きた」と述べ、これで移籍が事実上決定した。行き先はおそらく、レアル・マドリードであろう。
バラックはこれまで一度も金銭面の条件を出してこなかった。引退までカウントダウンが始まった年齢を考え、最後はどうしてもバイエルン以上の伝統と格式を持ったレアルでプレーしたい……、そんな心境だったらしい。
こうなればバイエルンもバラックの後釜を急いで探さなければならない。しかし辣腕のヘーネスGMとて、ロナウジーニョやデコ、ランパード、カカを引き抜けないのは承知している。たとえ彼らが交渉のテーブルに着いてくれたとしても、莫大な移籍金を払うことはバイエルンの経営哲学に反する。
そこで、2000万ユーロ以内で収められそうな数人の候補者をピックアップした。2000万以内というのは、「マカーイの移籍金(1875万ユーロ)を超えない額」としているためである。名前と移籍金は次の通り。
バルセロナのファン・ボメル(1200万ユーロ)、シャルケ04のリンコン(1500万ユーロ)、HSVのファンデル・ファールト(1500万ユーロ)、ビジャレアルのリケルメ(2000万ユーロ)、ハイデュク・スプリットのニコ・クラニツァル(400万ユーロ)。
「ドイツ人選手で後継者になれる人材はいない」と断言していたヘーネスだが、背に腹は代えられぬということなのか、ブレーメンのボロフスキ(600万ユーロ)にまで食指を伸ばしている。
ところで今回、バラックの去就でもっとも神経をすり減らしたのが誰かご存知だろうか?実は会長でもGMでも監督でもない。スポンサー企業「アディダス」なのだ。同社はバイエルン・ミュンヘン株式会社の大株主。ハイナー社長は組織上、バイエルンのナンバー2だが、アリアンツアレーナの建設費の大部分(105億円)を負担していることなどから、発言力では最大の影響力を持つ。
『バラック』のユニフォームや企画商品は国内随一の売り上げを誇ってきた。その最高の商品キャラクターが海外に流失してしまっては、アディダスとしても大変な痛手となる。移籍に気を揉んでいるのは、関係する企業とて同様なのである。