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MLBはいつだって経済の指標だった!?
数年後、日本の雇用が激変する理由。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2010/02/15 10:30
2009年のトレード期限日である7月31日に、トレードでマリナーズからデトロイト・タイガースへ移ったばかりのウォッシュバーンなのだが……
これからの日本はきっとこうなる――歩合給が増える時代。
コスト意識が高まると、どうなるか。答えはマリナーズがエリック・ベダードと交わした契約を見ると分かりやすい。
ベダードは期待されてマリナーズに入ったが、シアトルのメディアからすれば「とんだ食わせ者」だった。故障は多い、クラブハウスの空気を乱す……。しかし活躍するポテンシャルはある。
そこでマリナーズは基本給として1億5千万を用意し(分かりやすくするため、1ドルは100円で換算する)、それに加えて様々な歩合給を用意した。
・先発として14、17、20、23、26試合をクリアするごとに5千万円
・75イニングを投げると5千万円。100、125、150、175、200イニングをそれぞれ投げれば6千万円
・故障者リストに入らず、60日、90日、120日、150日登録メンバーに入っていればそれぞれ2千5百万円
このような細かい歩合給が設定されているのである。
これからの雇用形態、これはアメリカの野球界だけではなく、一般の労働市場、そしてこれは将来の日本の雇用形態を示している気がしてならない。
基本給を低く抑え、さらに成果主義を徹底させていく。ベダードの場合、歩合がつく条件をすべてクリアしたら7億円相当になる。基本給なんて、この金額を前にしたらほとんど意味をなさない。
いやはや、労働者にとっては厳しい時代が到来したものだ。
冬の時代を乗り切るには、選手としてはひとつひとつの仕事をきっちりやるしかないのである。