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アトレティコサポーターがデモ行進。
リーガ名門クラブが崩壊の危機へ。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byGetty Images
posted2009/09/25 11:30
リーグ第2節ラシン・サンタンデール戦では得点3分後にすぐさま得点を返され1-1のドロー。15日CLアポエル・ニコシア戦も0-0のドローに終わったアトレティコ・マドリー。ファンにとってはスッキリしない成績が続く
レアル・マドリー、バルセロナに次いでスペインで3番目に多くのサポーターを持つと言われるアトレティコ・マドリーのサポーターたちが、怒りの声を上げている。
2シーズン連続のチャンピオンズリーグ出場を果たし、今夏に複数のビッグクラブが獲得を狙ったアグエロとフォルランの2枚看板の残留にも成功。希望を持って新シーズンをスタートしていてもおかしくないはずのアトレティコだが、開幕から未勝利が続いた(9月17日時点)ことに加えて、7000人以上ものサポーターがホーム開幕戦前とチャンピオンズリーグ戦前にクラブ幹部を相手に抗議デモを行うなど、異様な状態となっている。
デモのきっかけはMARCA紙をはじめとするスポーツメディア。
アトレティコサポーターたちが、試合前にここまで大きな抗議デモを行う発端となったのは、MARCA紙やAS紙といった主要スポーツ紙によるアトレティコサポーターへの呼びかけだった。移籍期限ギリギリでエバートン移籍が決まったヘイティンガ放出を、ヒル・マリンGMが各主要スポーツ紙ではなく、一般紙のある一紙にだけに提供。それをもってして「クラブの情報公開の不透明さ」を主張した各主要スポーツ紙がアトレティコの過激派サポーターグループにデモを行うことを促したという。紙面には、サポーターグループがデモの呼びかけをしているという形で試合当日の抗議デモの開始時間や集合場所が記されていたのだ。7000人以上ものサポーターがVIP入場口近くまで詰め寄る騒ぎとなったこのデモによって、後日ヒル・マリンGMは、一紙だけにヘイティンガ移籍を漏らしたことを謝罪することとなった。
主要スポーツ紙の煽りによって一気に火がついたアトレティコサポーターの怒りの矛先は、ヒル・マリンGMだけではなく、セレソ会長にも向けられることになった。そもそもこの怒りの発端は、セレソ会長とヒル・マリンGMを中心に進められたビセンテ・カルデロン・スタジアムの売却計画にあった(2011年、新スタジアムへ移転予定)。スタジアムのメインスタンドの下を道路が通っているという珍しい構造に加え、スタジアムの横を流れるマンサナーレス川がクラブのあだ名ともなるほどにその土地のシンボルのように親しまれてきたビセンテ・カルデロンを売却しようとし始めた時から、セレソ会長とヒル・マリンGMには試合の度に抗議の合唱が歌われてきたのだ。
スター選手とホームスタジアムを売却。それでも莫大な負債が。
それに対して、セレソ会長とヒル・マリンGMは事あるごとに「フェルナンド・トーレスを売却するか、ビセンテ・カルデロンを売却するかしなければクラブがなくなる」、「ビセンテ・カルデロンを売れば負債は消え、最高のチーム強化ができる」と返答してきた。
だが、実際にはフェルナンド・トーレスとビセンテ・カルデロンという二つのシンボルを手放したにも関わらず、クラブの負債はまったく解消されなかったのだ。さらに新スタジアムの建築工事も一向に進んでいない状況が明らかになった。外観が作られただけで、本格的に工事が進んでいない新スタジアムは、今年10月に本格的に再着工とされてきた。しかし、つい先日ヒル・マリンGMは、再着工は来年1月以降と修正し、クラブが抱える負債はまだ1億6000万ユーロも残っていることを白状した。