オリンピックへの道BACK NUMBER
日本選手権やり投げ12連覇の31歳。
世界を目指し成長を続ける村上幸史。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTsutomu Kishimoto
posted2011/06/20 10:30
大会記録を22年ぶりに1m5cmも更新し、12連覇を達成した村上。スタンドでは3歳の長男が声援を送った
「日本人が世界に通じるところを見せたい」
80m台になかなか届かなかった頃が嘘のように、80m台を出すのは当たり前になった現在。
それは、村上のアベレージが上がったということを意味する。やり投げのような投てき種目では、もっともよかった一投で成績は決まる。とはいえ、常に一定のレベルのパフォーマンスを発揮できる地力がなければ、記録は期待できない。たまたま一投だけ素晴らしいパフォーマンスを演じるのは、現実には考えにくいからだ。その点からしても、アベレージが上がったことは村上の成長の証である。
やり投げは世界で通じないと言われ続けていたことに対し、「だったら僕が通じるところを見せてやる、と思っていました」とひたむきに練習に取り組んできた村上。ベルリンでの銅メダル獲得を、さらなる飛躍の契機に変えたのは、そんな地道な努力のおかげだろう。
村上の活躍に刺激された選手たちが続々と好記録をマーク。
ところで、村上のこうした活躍は、実は他の選手にも波及している。
日本選手権では、今シーズン、自己記録を更新し続け、急成長を遂げる19歳のディーン元気が、自己ベストの79m20で2位に入ったほか、3位の荒井謙、4位の新井涼平も自己ベストを出し、スタンドを沸かせた。
1人の選手の台頭が、他の選手の成長を誘発することがある。同じ陸上で言えば、福島千里の活躍により活況を呈する女子短距離陣がそうだ。
充実する村上の、今夏の世界選手権もむろんだが、やり投げの今後の活躍も、楽しみなところだ。