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大人になった五十嵐亮太が、
ヤクルト浮沈のカギを握る。 

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田端到

田端到Itaru Tabata

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2009/09/30 12:10

大人になった五十嵐亮太が、ヤクルト浮沈のカギを握る。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

フォームを改造した五十嵐亮太は、完全復活を遂げた!

 しかし、五十嵐亮太は戻ってきた。'09年、完全復活を遂げたのである。

 5月から6月にかけての21試合連続無失点。スワローズ消火団の8回担当セットアッパーとして、手術前にも負けない伸びのあるストレート(最高球速157km)を取り戻し、チームの好調を支えてきた。そしてぎっくり腰で一時離脱すると、チームも一気に転げ落ちた。

 今季の好調は、投球フォームの改造によるところも大きいのだろう。テイクバックをコンパクトに、踏み出す足の歩幅を大きめにして、リリースポイントをちょっと低くしたという。

 腕を振った後、跳ね上がるようにして、どこへ行くかわからない快速球を投げ込んでいた頃に比べると、現在のフォームは身体のバランスが崩れず、安定感がある。これで低目の制球力が増し、またフォークボールはコンパクトな落ち方になって、ゴロを打たせるフォークに変わった。

 意外に思う人もいるだろうが、今季の五十嵐亮太の奪三振率は、故障した'06年を除くと、プロ入り以来もっとも低い。スピードボールを取り戻しただけでなく、低目を打たせて取る技術を身に付けたのだ。

ファンの暴動騒ぎを食い止めた五十嵐亮太の男気。

 ヤクルトのチーム状態がどん底にあった9月20日。神宮球場10連敗を喫した試合後に、怒ったファンがクラブハウス前に集結し、暴動寸前になる騒ぎが起こった。騒ぎを沈静化させるために、選手を代表して謝罪に現れたのが五十嵐亮太だった。

 この出来事を受けて、「謝るべき人間はほかにいる」とか「五十嵐に責任はないのにいいヤツだ」といった声を多く聞いたが、知られていないエピソードがある。

 あのとき、幼い女の子があの場所にいた。怒号を浴びせ、騒ぎ立てる心無い大人たちに脅えて、五十嵐亮太の娘がクラブハウスの陰で泣いていたのだという。

 五十嵐亮太の登板時のテーマソング「ワイルドシング」は、映画『メジャーリーグ』でチャーリー・シーン演じる主人公が登場するときに流れる曲である。この主人公はもともとノーコン投手だったが、近眼が判明して、メガネをかけたことから生まれ変わる。

 若さをほとばしらせていた速球王子も、今年、30歳になった。

 守るべき家族と、でかくなったお尻と、耐え忍んだ日々の経験を得て、生まれ変わった五十嵐亮太の右腕が、今、うなりを上げる。そのとき、ヤクルトのクライマックスシリーズ進出と、夢の160kmは、自然と付いてくるだろう。

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