Column from EuropeBACK NUMBER
地方のサッカー人気とは。
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byAFLO
posted2004/08/16 00:00
リーグカップでバイエルンが優勝した。通算5回目で、相手は前年の2冠王ブレーメンだった。バイエルンにとり、溜飲を下げる思いだったに違いない。なにしろ昨季は3冠が目標だったのにタイトルを1つも取れず、リーグ戦でもホームスタジアムでブレーメンに胴上げを許してしまったのだから、まさに目の上のタンコブを取り払った感じだろう。
リーグカップとは前季の上位チームとDFB杯優勝チームにより変則的なトーナメントで争われるもので、リーグ開幕直前の“地方巡業”だ。今年は両チームを合わせて6チームが参加して行なわれた。
しかし大会としての権威はほとんどないに等しい。優勝チームには130万ユーロ(約1億7000万円)、2位には90万ユーロ(約1億2000万円)の賞金が与えられるが、優勝しても国際大会への出場権が得られるわけではない。
おまけに、これだけ豪華な組み合わせなのに、決勝戦の前売り券(立見席で1300円、座席でも最高3300円)がかなり余っていた。当日はほぼ満員になったものの、小さなスタジアムだけに、観客数は1万3000人だった。全試合を通じても平均入場者は1万人をほんの少しオーバーするくらい(それでも満員に近い)。
だったら何のために大会を開いているんだ? となるが、最大の目的は「ふだんトップレベルのサッカーを見る機会の少ない地方で、本物の醍醐味を味わってもらう」ことである。
大都市だと、どこでもプロチームがあるが、地方の町や村だとプロの試合を見ようとすれば泊りがけの旅行になってしまう。それを地方で行なうことにより、さらにサッカーファンを増やし、競技の普及につなごうという意図なのだ。これがブンデスリーガの狙いだ。
だからリーグカップはホームもアウェーもなく、完全に中立な町で開催される。今年の準決勝の開催地メッペンとバッテンシャイドの人口はいずれも5万人に満たない。決勝戦のマインツ(一応、州都です)は18万人だ。
ちなみに、地元チーム『マインツ05』が5月に大聖堂前で開催したブンデスリーガ昇格記念報告会には、市民およそ3万人が詰めかけて大盛況だった。それがバイエルンとブレーメンという当代切っての人気カードで前売り券が余っていた…。
地方への人気浸透はあくまでもサッカーの魅力そのものであり、決してチーム単独の人気は拡大しないということの証明なのだろうか。それが分かるのはマインツのホームゲームの入場者数から判断するしかないが、こちらはすでにシーズンチケットがほぼ完売だそうだ。もちろん人気カードの前売り券も。