Column from GermanyBACK NUMBER
ピサロが財団を設立するというけれど……。
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byGettyimages/AFLO
posted2006/01/18 00:00
冬休みで故郷リマに戻ったバイエルン・ミュンヘンのペルー人FWピサロが、集まったマスコミの前で、「障害を持った子供、才能を持ちながらも発揮する機会がない子供を支援する」、その名も『クラウディオ・ピサロ財団』を設立すると発表した。
バイエルンは昔から社会福祉への関心が強いクラブだ。ジョバンニ・エウベルは貧困に喘ぐ子供を救う『ロンドリーナ』財団を運営している。ウリー・ヘーネスGMは難病の子を物心両面で支援する。子供が「試合が見たい」と担当者に言えば、ヘーネスは躊躇わずにチケットをプレゼントするのだ。あの皇帝ベッケンバウアーも同様の財団を持っている。
そんな雰囲気に感化されたのだろうか。ピサロは急に弱者への関心を強めた。手始めに自分の蓄えから10万ユーロ(約1400万円)を基金に提供した。「生まれ育ったペルーに何かを恩返ししたい」気持ちは熱い。
だが、この財団、どうも前途多難なのだ。なにしろ、何をどうするのかといった具体的なプロジェクトが不透明。加えて、対象となるのがペルーに住む子供なのに、財団の本拠地を首都のリマではなく、遠く離れたミュンヘンにするというのも理由が分からない。
「もう少し、財団の設立を隠しておくべきだったかもしれない」と本人は拙速な行動を反省しているが、会見場(カフェ)に集まった記者からは次々と厳しい質問が飛んできた。
彼の代理人カルロス・デルガドも困惑気味だ。「問題は、このアイデアを支持してくれる人が何人になるかということです。それに財団は規約がまだ出来ておらず、本部職員も雇う予定が立ってません」と、絵に描いた餅への危惧を表している。それでもピサロは「世界のベストプレーヤーの応援を待っている。今年中には準備をすべて終えるぜ」と屈託がない。チームメイトのパウロ・ゲレーロは、「お前のハートには人間の暖かい血が流れているんだろ?だったら応援しろよ」と、ピサロの脅迫めいた“殺し文句”に戸惑っている。
果たしてこの財団、無事にスタートを切ることができるのか?