イチロー メジャー戦記2001BACK NUMBER
So far, Soooooo Good!
得点圏打率5割4分8厘の男。
text by
木本大志Taishi Kimoto
photograph byNaoya Sanuki
posted2001/05/18 00:00
5月15日の対ホワイトソックス戦、ハイライトは6回裏にめぐってきた。
得点2対2。2アウトでランナーは1、2塁。打席にイチロー。
ホワイトソックスは左のマーク・ビュールからわざわざ左のケリー・ワンシュにピッチャーを変えてきた。メジャートップの得点圏打率.548(5/14現在)を誇るイチローに対して万全の態勢を敷いてきたといっていい。ホワイトソックス監督、ジェリー・マニュエルもまさにここが今日の勝負所と読んだのだろう。
Batting Average with Runner in Scoring Position: .548 (5/14)
―得点圏打率5割4分8厘 (5/14現在)―"
実はその日の午後、シアトルP-Iのスポーツ・コラムニスト、アート・シールと電話で話をしていて、この数字が話題になった。アートはイチローの勝負強さに"Unbelievable!"を連発した。
話はさらにさかのぼる。
2月初め、ルー・ピネラは、「スプリング・トレーニングでは、イチローの3番テストもしてみたい」そう話した。イチロー自身は「サイズが小さいのでクリーンアップを打つのは難しい。マリナーズのイメージが悪くなる。できれば1番か2番、または5番より下を打ちたい」、そうやんわりと否定し、結局それは実現されなかったが、今思えばあながちピネラの思いつきで出た話でもなかったような気がする。
前出のアート・シール。「あの当時、マリナーズはアレックス・ロドリゲスが去ったことで、得点力不足が懸念されていた。ピネラとしては、イチローのヒットを、チャンス・メーカーとしてではなく、クリーンアップとして使いたいと思ったのではないか。チーム事情がチーム事情だっただけに、それくらい1本のヒットの有効活用をピネラは模索していたといえる」。
あの段階で、ピネラが“.548”を予感していたとは考え難いが、「俺のひらめきは間違っていなかった」、今頃そうほくそ笑んでいてもおかしくはない。
冒頭の勝負。あっさり2-0と追い込まれたイチローはそこから粘った。まるで背中の後ろから曲がってくるようなカーブもカットで逃れる。マウンドではピッチャーのワンシュが信じられない、といった顔で何度も首を振っている。8球目、イチロー執念の打球は、センターへ抜けていった。
Batting Average with Runner in Scoring Position: .563 (5/15)"