イチロー メジャー戦記2001BACK NUMBER

Cute! イチローの動きに注目。 

text by

木本大志

木本大志Taishi Kimoto

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photograph byNaoya Sanuki

posted2001/05/16 00:00

Cute! イチローの動きに注目。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 先日、セーフコ・フィールドのメディア席を離れて、やや外野寄り、一塁側の内野スタンドに腰を下ろしてみた。ちょうどライトを守るイチローを真横から見ることができる位置だ。少し気分を変えてイチローを見たかったのと、ファンのイチローに対する反応を肌で感じてみたかったからだ。

 席を変えて正解だった。

 あの位置からイチローを見て、あることに初めて気づいた。

 守備についているときのイチローの動きである。

 とにかくよく動くのだ。

 手首、足首を投球の合間を見てはほぐす。タイムがかかったときなど、間があいたときは、グローブを右手に持ち替え、その重さを利用して大きく肩を回す。シャドー・ピッチングのようなこともする。じっとしていることがない。

 その動きに気づいてから、他の外野手の動きも追ってみたが、簡単にストレッチをする程度で、イチローほど頻繁に体を動かしている選手はいない。

 メディア席からは、あの細かい動きに目がいかなかった。

 テレビ中継を見ている限り、イチローのところにボールが飛んではじめてイチローが視界に入る。ライトにいるイチローの仕草を知る由もない。

 知り合いのローカル・メディアにそれとなく話すと、「シアトルは寒すぎるかな?」と笑った(確かにシアトルでのナイトゲームは、5月に入っても10度前後の中で行なわれる)。「それは冗談としても、体が常にONだから、打球への反応が早いし、矢のような送球が可能なんだろうね」。

 イチローはあの動きを意識しているのだろうか?

 おそらく答えはNoだろう。無意識のうちに体に染み付いた動きではないのか。そうでなければあれだけ動きを意識して続けるのは難しい。

 さて、一塁側スタンドに腰を下ろしたもう一つの理由──ファンのイチローに対する反応──であるが、これもまた面白かった。スタンドからは"イチー(イチローではなく、イチー)"という声が頻繁にかかる。隣にいた小さな女の子も"GO ICHIRO"の手作りボードを持って、声をからしていた。

 イチローのこと好き?

 9才の女の子が答えてくれた。

 "He is cute (かわいい)."

イチロー
シアトル・マリナーズ

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