ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER
2005年コンフェデレーションズカップVSメキシコ戦(2005年6月16日)
text by
木ノ原久美Kumi Kinohara
photograph byNaoya Sanuki
posted2005/06/20 00:00
W杯予選を突破して、アジアから世界へ舞台を移した最初の大会の初戦で、日本はアジアと世界の違いを体感した。
「アジアだったら大丈夫という場面でも、ピンポイントのクロスが来たりする。そういう違いはあると思う」
試合前日にDF宮本が警戒していた予想が的中した。
6月16日、日本はハノーファーでメキシコと対戦し、FW柳沢の先制ゴールを生かせずに2−1で逆転負け。コンフェデレーションズカップ初戦を白星で飾ることはできなかった。
この日、ブラジルがギリシャに3−0と快勝し、B組初日を終えて首位に立った。以下、メキシコ、日本、ギリシャと続いている。
予想していても対応できなかったところが、今の日本のレベルかもしれない。
前半12分の柳沢の先制点は、宮本−小笠原―加地とバックラインから縦へシンプルにつないで組み立て、最後は加地の右サイドのクロスに柳沢がゴール前でDF二人にマークされながらうまく合わせたもので、攻撃の形としてはよかった。
ところが、その後がいけない。
中盤でのチェックが甘く、ボールを持っている相手に詰めきれず、前半途中からメキシコにDFラインまでボールを持たせて入り込ませてしまう。それが何度となく繰り返されて日本は全体にズルズルと下がってしまい、ゴール前で7〜8人が張り付いてディフェンスする形が続いた。簡単にボールを持たせてパスを回され、クロスを入れられてしまい、相手にペースを作らせてしまった。
そしてメキシコを活気付かせたのが前半39分の同点弾だった。MFカルモナが右サイドから持ち込んで出した横パスを、なぜかフィールド中央で小笠原は手を出さずにウォッチ。ボールは逆サイドを上がってきたジーニャに渡り、マークの遅れた加地を尻目にジーニャにミドルシュートを決められた。
動きの落ちた日本は後半になっても試合の流れを変えることはできない。点を獲りに行った小笠原からFW大黒、茶野からFW玉田への交替も奏功しなかった。
後半18分に決勝点を決められたが、左サイドのMFロドリゲスにも楽にクロスを上げさせて、ゴール前で構えるフォンセカをマークしていた茶野と三都主もハイボールを競り合うことができずにヘディングを許してしまった。
あと1歩の詰めが出ない。簡単にボールを獲られる。なにが致命的になるかというプレー認識と危機管理の欠如は、まるで、昨夏のアテネ五輪のイタリア戦で相手に詰めきれずにゴールを許していた、23歳以下の日本チームの再生ビデオを見ているようだった。年代は違っても日本が抱えている問題は変わらないということか。少なくとも、この日の日本代表は、アジアから世界へ、頭の中が切り替わっていなかったということだろう。
ジーコ監督は、「いつもならあり得ないようなポジショニングのミスが、今日の試合で起こってしまった」と言い、小笠原は「守備で走らされていつのまにか足に来て、足が止まっていた。いざ攻めようというときに走れなかった」と振り返った。
暑さとプレッシャーの中で戦ったW杯予選のアウェー2連戦、その前のキリンカップと連戦が続いた疲れが出てもおかしくない。だが、この大会直前のW杯予選はどの国も同じ条件だ。言い分けにはできないだろう。
問題は中2日で迎えるギリシャ戦を前に、これらの課題をどう修正するか。その対応力も世界で戦うには必要不可欠な要素だ。ここで日本チームがどういう反応を見せるか、注目したい。