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バルセロナvs.チェルシー
「潰しあい、消耗した、両雄の死闘」 

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中嶋亨

中嶋亨Toru Nakajima

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photograph byToru Morimoto

posted2009/04/30 12:00

バルセロナvs.チェルシー 「潰しあい、消耗した、両雄の死闘」<Number Web> photograph by Toru Morimoto

 28日(現地時間)に行われたバルセロナとチェルシーによるCL準決勝第一戦目。序盤から試合の構図は定まった。

 ボールを支配し、攻撃を仕掛け続けたホームのバルセロナに対して、全選手が自陣に引いて守備を最優先したチェルシー。ホームで何としても勝利したいバルセロナと二戦目に向けて引き分けでも十分なチェルシーの行き詰る攻防は、最終的に0対0で幕を閉じた。

 シャビとイニエスタの指揮の下、変幻自在にボールを動かしたバルセロナはチェルシーをペナルティエリア前に釘付けにした。チェルシー守備網の判断スピードを上回る攻撃は次々とチャンスを生み出し、4対0で圧勝した準々決勝の対バイエルン戦の再現も有り得るのではないかというほどに相手ゴールを脅かし続けた。

 しかし、「バイエルンと同じ失敗はしない。私の選手達は90分間、最高級の集中力を維持するだろう」と試合前日に語ったチェルシー監督ヒディンクの言葉通り、チェルシーイレブンがゴール前に張り巡らした強固な守備網はバルセロナの猛攻を凌ぎ切ったのだ。

ヒディンクは目標を達成した選手たちを称賛

 チェルシーは幾度も最終ラインを突破されて危険な場面を招いた。しかし、彼らは驚異的な建て直しの速さによって最後の最後でバルセロナのアタッカーから自由を奪った。サイドからクロスを上げられればポジション争いに競り勝ち、ペナルティエリア正面から放たれるミドルシュートには素早く体を入れてコースを限定した。バルセロナの切り札メッシには高い身体能力を有するボジングワが徹底的に貼り付き、バラック、ランパード、ミケル、エシエンら屈強なMFが待ち構える中央へとドリブルを誘い込んだ。そしてGKチェフは的確なポジショニングと鋭い反応で全てのシュートを阻止した。

 唯一、完全にフリーになった状態で許したシュートは後半ロスタイムにボージャンが放ったヘディングシュートだったが、これは枠外へと外れる幸運に恵まれた。

 試合後、チェルシー監督ヒディンクはこの試合の目標を達成した選手達を賞賛した。

「チェフは素晴らしいセーブを披露し、ボジングワはレオ(・メッシ)を上手く抑え、マルーダが左サイドをしっかりとケアした。テリーは主将として最後までチームを牽引し、全員がそれに応えた。だが、来週は今夜よりもボール保持率を高めるために幾つかの部分を修正したい」

「バラックは退場になるはずだった!」 グアルディオラの叫び

 一方、引き分けに持ち込まれたバルセロナ監督グアルディオラは審判の判定、そしてチェルシーのプレースタイルに対する不満を露にした。

「本来ならばバラックは二枚のイエローカードを受けて退場になるはずだったのに、それが見逃されたのは実にスキャンダラスだ。常に攻め続けた我々と、プレーを止めようとし続けた相手が同じ数のイエローカードを受けているのは、どう考えてもおかしい。攻撃を仕掛けようともせず、自陣に引きこもった相手を前にペナルティエリアに攻め入るのは難しい。それにも関わらず多くのチャンスを作った攻撃を評価しているし、ロンドンでも同じように攻撃するだけだ」

 昨季CL準決勝(対マンチェスター・U)以来のホーム無得点に終わったバルセロナだが、FWエトーは「ロンドンではチェルシーも攻撃せざるを得ない」と語り、一戦目よりもゴールの可能性が高くなることを示唆している。とはいえ、バルセロナは守備面で致命的な痛手を負ってしまった。CBマルケスが試合中に左膝を負傷してそのまま病院に運ばれ、主将プジョルは累積警告で次戦出場停止となった。主力DF二人を欠いたバルセロナは、ホームの大声援を背にして猛攻撃を仕掛けてくるであろうチェルシーを止められるだろうか。いずれにせよ、ロンドンでの決戦が激しい打ち合いになることは間違いない。

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