野球善哉BACK NUMBER
左打者有利の時代は終わったのか!?
好調チームの陰に右の好打者アリ。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/06/06 12:20
右打者としてシーズン歴代最高打率記録.378を持つ、まさに球界を代表する右打者・内川聖一。2008年から昨季までの対左投手の平均打率は.356と非常に高く、2008年には実に.439という高打率であった
やはり、数年前耳にしたスカウトの嘆きは偽りではなかった。
スカウト活動に日々いそしむ彼らは、口々にこう話していたものだ。
「右打者がいない。特に大砲を中心に右打ちの野手がいない。球団からも、要望されているが、実際いないんだよ――」
交流戦も終盤に差し掛かり、40試合ほどを消化した今シーズン。数年前のスカウトの言葉通り、右打者の活躍いかんがチームの浮沈を左右している。
順位が如実に反映する……チームの浮沈を握る右打者の存在。
パ・リーグの首位を行くソフトバンクは新加入の内川聖一が.354の打率でチームをけん引し、彼が故障離脱した際には和製大砲の松田宣浩がその穴を埋めた。小久保裕紀、多村仁志も機能している。
同2位の日ハムは中田翔、陽岱鋼ら若手が台頭。田中賢介、糸井嘉男、稲葉篤紀が支える屋台骨に乗っかっている。主砲・小谷野栄一の故障離脱でも、戦力ダウンを感じさせていない。
セ・リーグに目を移しても、首位のヤクルトはバレンティン、宮本慎也、畠山和洋が、青木宣親頼みだった打線に厚みを与えている。バレンティンは現在、セ・リーグの2冠。畠山と宮本も、打率10傑入りを果たしている。
一方、パ・リーグ最下位の楽天はベンチを含めて左に好打者が揃い、バランスを欠いている。好投を続ける投手陣を見殺しにし、上位浮上のきっかけをつかめていない。
序盤こそ、セ・リーグで上位争いを繰り広げていた広島は、今季好調だった右打者の広瀬純が故障で戦線離脱。この時を境に泥沼状態に陥り、現在9連敗中である。最下位の阪神も昨シーズン最多安打のマートン、城島健司が不調。横浜、広島と下位を争っている。
データだけ見ると、それほど左打者偏重でも無いのだが……。
プロ野球の登録選手数、つまりデータを眺めているだけでは、左打者が多いという事実はない。だが、'09年に世界を制したWBCのメンバーの主力がそうだったように、左打者の存在が主軸として目立っていることは間違いない。
「右打者もいるんだけどね、主力打者で言うと、左が多く感じてしまうんだよね」
そう話すのは阪神・池之上格スカウト。スカウト活動における興味深いエピソードを語ってくれた。
「'05年のドラフトの時に、当時、NTT西日本にいた脇谷亮太(巨人)をプロで活躍できる選手として、リストアップしていたんです。ところが、球団が欲しいのはとにかく右打者だと。それで、一度はリストから消されたんです。最終的に彼の名前はリストに挙がったのですが、左打者というだけで評価されなかったんですよ」