MLB Column from USABACK NUMBER
本塁打王マーク・マグワイア、
薬剤使用の遅すぎた告白。
text by
李啓充Kaechoong Lee
photograph byCongressional Quarterly/Getty Images
posted2010/01/17 08:01
2005年にアメリカ議会で証言するマグワイア。シーズン70本だけでなく、通算583本塁打は歴代8位の実績である
「すべての記録は天与の才能で達成した」と強弁。
マグワイアの「1本塁打当たり10.61打数」の記録は、2位ベーブ・ルースの11.76打数を1打数以上下回る史上最高記録。しかも、本格的に薬剤を使い始めたとされる1993年以降引退するまでの9シーズンに限ると、1本塁打当たりに要した打数はわずか8.44。「すべての記録は天与の才能で達成した(=薬を使わなくても自分は人間離れした実力の持ち主だった)」と強弁するのである。
「ステロイドを使ったのは事実だけれども、自分の記録は薬剤によって作られたものではない」と苦しい主張をするのは、野球殿堂入りに対する未練からと言われている。
殿堂入り候補者のリストに載ってから4年目のマグワイア。今年も、得票率は23.7%と殿堂入りに必要な75%を大きく下回った。得票率を上げるためには「正直」に告白することが必須だったのだが、薬剤汚染選手を殿堂入りさせることへの抵抗感は強く、来年以降も得票率が大幅にアップすることはないと見られている。
ボンズ、クレメンスは偽証罪に問われたが……。
ところで、5年前の議会証言で黙秘権を行使したのは、「正直に話したかったのに、司法省が刑事免責を与えることを拒否したため」とする事実が今回明らかにされた。薬剤使用を告白したら罪に問われる可能性があったので、「過去について話す気はありません」と見苦しい証言に終始したのである。当時は「卑劣」と猛批判を浴びたが、結果としては賢い選択だったと言えよう。
バリー・ボンズは大陪審で、そしてロジャー・クレメンスは議会で、それぞれ宣誓の下に薬剤使用を否定する証言をしたがために、いま、偽証罪の罪に問われている。それに引き替えマグワイアは、罪に問われるどころか、球界復帰の道まで開けたのだから……。