チャンピオンズリーグの真髄BACK NUMBER
ヒートアップするベスト16争い。
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byAFLO
posted2004/11/09 00:00
バルセロナ、ユベントス、ミラン。「マッチデイ4」を終了して、少し抜けているのではないかと僕が思うのはこの3つ。チェルシー、インテル、マンUがその次で、アーセナル、バイエルンは第3グループとなる。レアル・マドリーの場合は、いつ終わってしまうのかと、いたってネガティブにならざるを得ない。
それにしてもだ。ズラタン・イブラヒモビッチは凄い。ユベントスというメジャーなクラブに移ったことで、訴求力が高まったこともあるが、移籍早々ここまでやるとは驚きだ。
アンリでもない。ファンニステルローイでもない。ロナウドでもビエリでもマッカーイでもない。ロマーリオ、バティストゥータ、ウーゴ・サンチェス、クリンスマンといった1世代前のストライカーの中にも、似たようなタイプは見当たらない。
強いて挙げればマルコ・ファンバステン(現オランダ代表監督)。長身でありながら、足元も巧いという点で共通するが、イブラヒモビッチは、ファンバステン(189cm)よりさらに長身で(192cm)で、足元はそれ以上に繊細だ。ストライカーに限らず、身長と足元の関係がここまで良い意味でアンバランスな選手も珍しい。
欧州No.1ストライカーと断定するのは早計ながら、前述の現役ストライカーたちより、断然輝いて見えることは確かだ。彼にボールが渡ると、サッカーという競技が、途端に面白く、美しく、鮮やかに見えてくる。次の瞬間、即ゴールを予感させるだけに、中盤選手のプレーよりも数段スリリングだ。また、ユーベにそれがとてもハマっている。絶妙のアクセントになっている。その異才がいっそうデフォルメされた結果が、ユーベの好成績の原因といっても過言ではない。
一方、そのイブラヒモビッチを移籍期限最終日に売り払ったアヤックスは、ベスト16入りがきわめて難しい状況になっている。彼を売り払ってなお、ベスト16入りすればホクホク顔になれるところだったが。
アヤックスの渋面は、PSVと比較すると、いっそう鮮明になる。ロッベン、ロンメダール、ケズマンのレギュラーFW3人をイングランドへ売り払い、それでなおかつPSVは、グループリーグでアーセナルなどを抑えて現在首位に立っている。ベスト16入りすれば、商売上手この上ない賢いクラブと絶賛されるだろう。
リヨンも同様だ。こちらも多くの選手を売りに出しながら、2季連続のベスト16を視界に捉えている。
PSV、リヨンといった伏兵にとって、ベスト16は大きな目標だ。クリアできれば大成功。以降は、負けて元々と捨て身で行ける。一方、ビッグクラブにとっては、ひとまずホッとできる線になる。彼らの財政は、そこで転がり込む約20億円を当て込んで回転している。つまり、同じベスト16でも、両者の間では歓びの量に開きがある。番狂わせの要素は、その当たりにも潜んでいる。次節「マッチデイ5」以降、約20億円をめぐる争いは、ますますヒートアップしていく。