捨てられた“お荷物”がマクラーレンを救った。

　KERS（エネルギー回収システム）がサーキットを選ぶことは前記シルバーストンの例をみても分るが、グリッドから1コーナーまでの距離が長いドイツ（ニュルブルクリンク）ではその威力を発揮。5位スタートのハミルトンが1コーナーではポールシッターのウエーバーを抜く勢い。この時は接触によるタイヤパンクで後退したが、コバライネンが6位から3位にジャンプアップし、KERS効果を実証。そして迎えたハンガロリンクでは、予選4位のハミルトンが1コーナーで3位に、予選7位のライコネンが4位に浮上。ハミルトンはその後1コーナー立ち上がりから2コーナーにかけてKERSパワーをリリースしてウエーバーを抜き、これが勝利へのお膳立てになった。

　ハミルトンの優勝はすなわち、F1グランプリ史上初めてのKERS搭載車の優勝という記念すべき事蹟ともなった。ルノー、BMWが捨てた“お荷物”が、名門復活の立役者となったとは皮肉な話ではあるが、ルノーはベルギー（スパ-フランコルシャン）から再びKERSを装着するという噂もある。

　マクラーレン・メルセデスは過去10年ハンガロリンクで5勝し、これを含めて10回表彰台に上ったハンガロリンク・マイスターである。今年はさらにもう1勝が足された。やはりこの丘には、シルバーアローを偏愛する勝利の女神が居るに違いない。