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ルーカス・ポドルスキ 「ゲルマンの異端児」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
posted2006/09/14 22:24
ただ──これが誤解のもとなのだが──ポドルスキはピッチに入ると180度人格が変わってしまう。周りを笑わせようとする普段のサービス精神はかけらもなくなり、対戦相手を必要以上に不愉快にさせる“挑発屋”になるのだ。
だから相手と、しばしば衝突する。
8月16日のスウェーデンとのテストマッチでは、DFのアンデルス・スベンションを激怒させた。試合後、彼は「ポドルスキは、くそったれな野郎だ」とプレスにぶちまけた。
「ヤツはずっとオレにぶつぶつと話しかけてきた。私が止めろと言ったら、審判が見てないときにビンタしてきた。そもそもW杯で対戦したときも、ヤツは最低だった。ルチッチが退場になったとき、ヤツは主審に向かって拍手したんだ。あれがポドルスキって人間を物語っている」
W杯のアルゼンチン戦では、DFのマスチェラーノはイライラが募って、何度もツバをポドルスキに吐きかけた。この冗談好きな若者は、ピッチの中に入ると実に憎たらしいヤツに変身してしまうのだ。
もしかしたらポドルスキは、勝利へのこだわりが人よりも強すぎるのかもしれない。
サッカー人生を決定づけた17歳の日のできごと。
ポドルスキの人生観を変える試合が、17歳のときにあった。
ポドルスキはポーランド人の両親のもとに生まれ、2歳のときにポーランドからドイツに移り住んできた。父親は元プロサッカー選手で、母親は元ハンドボール代表。家ではポーランド語で話すし、音楽も食事もポーランドのものが好きだ。ドイツで育ったとはいえ本人いわく「魂はポーランド人」なのだ。
だが、サッカーだけは“ドイツ代表”を選んだ。
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