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松井秀喜 「危機感は常に持っている」 【連載第1回】
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2009/04/01 23:55
崖っぷちのシーズン
ここ数年、オフには必ず日米のメディアを巻き込みヤンキース・松井秀喜外野手のトレード報道が流れる。ただ今年、例年にも増してその可能性が報じられたのは、いくつかの背景があったからだった。
新ヤンキースタジアムの1年目。チームは新球場で是が非でも世界一に返り咲きたい。そのためになりふり構わぬ補強を続けた。
C・C・サバシア投手とA・J・バーネット投手と、FA市場の目玉投手を両獲り。打者でもニック・スウィッシャー外野手に加え、やはり大物FA選手の一人、マーク・テシェーラ一塁手も獲得した。さらにはかつてライバルのボストン・レッドソックスでヤンキースを脅威にさらしたマニー・ラミレス外野手にまで触手を伸ばしているというウワサも飛ぶほどだ。
松井自身を振り返れば、一昨年の右ひざに続いて、昨年は左ひざの手術を受け、肉体的に完全かどうかはキャンプに入ってみなければ分からない。しかも2009年は4年契約の最終年。1300万ドルという高額年俸もあり、FAになる前年の放出要員という条件にはピタリと当てはまることもあった。
最終的にはどうやらヤンキースのユニフォームを着て、2009年シーズンは始まることになりそうだ。ただ、こうした周辺環境を考えれば、ヤンキースの選手としてはまさに崖っぷちのシーズンとも言える。言葉を換えればヤンキースに、メジャーに残れるかどうかの分岐点の年ということだ。松井にとってはメジャープレーヤーとしてのアイデンティティーを賭けた勝負の年が、幕を開けることになる。
ヤンキースでプレーしたい
――危機感を持ったキャンプインですね。
「また今年もレギュラーをとるところから始まるわけですから、そういう意識、危機感は持ってやっていきます」
――追いつめられている意識はある?
「客観的にはそうかもしれないけど……」
――周りは確実にそう見ていますよ。
「まあ、見る方はそう見るだろうし、実際そうなのかもしれない。でも、僕的に言わせてもらえば危機感というのは常に持っています。どういう状態でも、どういう立場にいても常にそういう気持ちは持ってきた」
――契約最終年ということは?
「もちろん現実だけど、あまり考えないです」
――結果が悪ければチームを去らねばならない。
「それは間違いない。ヤンキースは結果が出ない年俸の高い選手がいられるチームではないですから。それははっきりしています。結果が出れば残る可能性もあるでしょうし、結果が出なければ違う球団に行く。誰の身にもふりかかり、自分も例外ではない。そういう覚悟は常に持っています」
――ヤンキースで野球生活を終わるのが目標?
「目標というより、そうなればいいとは思う。ヤンキースが一番好きだし、ヤンキースでプレーしたいけど、それがかなわないなら仕方ないという割り切りも持っています」