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NFL最年少優勝監督、マイク・トムリンが教える「組織を守る改革術」 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2009/10/22 11:30

NFL最年少優勝監督、マイク・トムリンが教える「組織を守る改革術」<Number Web> photograph by AFLO

戦術も前監督のものを流用。変化よりも安定を心がけた。

 戦術面もトムリンはソフトランディングを心がけた。アメリカン・フットボールには「プレーブック」と呼ばれる選手の動きを図解した戦術書がある。一般的に、ヘッドコーチが交代するとプレーブックも刷新されることが多い。コーチが変化をアピールするためだ。しかしトムリンはプレーブックも前任のカウアーのものを流用した。

 トムリンはリーダー交代による変化よりも、安定を訴えることで、選手たちの動揺を最小限に抑えようと努力したのである。

「本物の尊敬は時間をかけて得るしかない」。

 一方で、選手たちは新任コーチに挑戦的だった。あるランニングバックの選手が「今のオフェンスでは俺がボールを持って走る機会が少なすぎる!」と不満を漏らした。トムリンは「自分の仕事はチームを優勝に導くことであって、誰かにタイトルを取らせることではない」と一蹴した。

 2年目になると選手たちは「コーチは去年より成長しているよ」と、まるで「上から目線」でトムリンのことをマスコミに話した。

 NFLのヘッドコーチはナメられてはいけない。トムリンは「私の仕事は選手のパフォーマンスを評価することであって、選手がコーチのことをどう評価するかはまったく興味がない」と話し、選手におもねることなく、卑屈にならないことで尊敬を徐々に獲得していった。トムリンは「瞬間的に尊敬は獲得できるが、本物の尊敬は時間をかけて得るしかない」と語っている。

革命よりも伝統への恭順を。それがトムリンの成功法則。

 1年目に10勝6敗でプレーオフ進出を果たし、それが2年目の優勝につながった。象徴的だったのは、ルボー流の積極的に圧力をかけるディフェンスで、頂点に辿りついたことだった。36歳は71歳の部下を使いこなしたのである。

 トムリンの成功は、伝統ある組織に対し、革命を起こそうとはしなかったことにあるのではないか。

 マスコミは若いリーダーが革命家であることを期待するが、トムリンはチームを自分の色に染めるのではなく、伝統ある組織に恭順の意思を表すことでチームを活性化させた。

 今後は、スティーラーズの財産とトムリンのアイディアがどうミックスされるのか、40代のトムリンを見るのが今から楽しみだ。

マイク・トムリン

1972年、米バージニア州生まれ。大学のコーチとしてキャリアを積み、'01年、バッカニアーズのコーチ就任。バイキングスを経て、'07年、スティーラーズのヘッドコーチに。'08年度、史上最年少の36歳でスーパーボウル制覇に導いた

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