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今夏移籍市場の鍵を握るサンチェス。
神童の姿をコパ・アメリカで目撃せよ!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2011/05/12 10:30
南アW杯でも大活躍し、チリ代表の決勝トーナメント進出の原動力となった。南米の選手らしい華麗なドリブル技術を誇る
長友佑都の起用法をも左右する!? 若き天才の影響力。
「彼は夢を見させてくれる選手だ」とモラッティ会長がラブコールを送るインテルや、右サイドの即戦力として高く評価するチェルシーへは、昨冬にも2800万ユーロ(約32億円強)で移籍実現の可能性があった。
しかし、クラブ経営を握る実業家ポッツォ・ファミリーが「われわれのメッシ」の売り時は今夏と判断、さらなる移籍金高騰の目にかけた。
今やユナイテッドとシティというマンチェスターの2大クラブが参入し、バルセロナも熱視線を送るほどに。
現在の相場は「競り値は最低3000万(約34億6千万円)から」(『ガゼッタ・デロ・スポルト』)。'99年に、当時金満クラブだったパルマへFWアモローゾを売った際に得た、クラブ史上最高額の約3300万ユーロ(当時640億リラ)へ迫る勢いだ。
獲得へのポールポジションにあるのは、DF長友佑都の完全移籍も濃厚なインテルだが、サンチェスへの投資額を捻出するには、UEFAのファイナンシャル・フェアプレー規定をクリアすべく、それに値する選手を手放さなければならない。
そこで考えられるのがSBマイコン放出だ。サンチェスの移籍動向は、長友の来季起用法へも影響を及ぼす可能性がある。
チリ代表としてコパ・アメリカでも「神童」旋風を巻き起こすか。
若いサンチェスは、グイドリン監督の熟練した指導法にも恵まれた。
同じチリ代表MFイスラとともに自宅へ招かれ、アットホームな夕食をともにしながら指揮官の考えを理解し、周囲との絆を深めた。
落ち着いた古都にあって驕らないことを覚えた本人も、「監督は僕に“低空飛行でいけ、謙虚な姿勢を崩すな”と諭してくれる」と感謝の意を隠さない。
ただし主将でもあるディナターレが「あいつはそう遠くないうちにナンバーワンになる。あらゆるチームが欲しがる選手になる」と言うように、今季終了後に彼がビッグクラブへ旅立つことは、もはや運命づけられている。
'98年当時のザッケローニ監督が樹立したクラブ勝ち点記録64の更新も期待されるなか、ウディネーゼは5月22日の最終節、新王者ミランと戦う。サンチェスもゴールを決めた1月の対戦では、4対4の引き分け。クラブの今季を象徴するような派手な撃ち合いが再び見られるかもしれない。
今夏の移籍市場で台風の目となるにちがいないサンチェスのプレーを、最終節ミラン戦で、そしてチリ代表として出場する7月のコパ・アメリカでも、ぜひ堪能しておきたい。