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今夏移籍市場の鍵を握るサンチェス。
神童の姿をコパ・アメリカで目撃せよ!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2011/05/12 10:30
南アW杯でも大活躍し、チリ代表の決勝トーナメント進出の原動力となった。南米の選手らしい華麗なドリブル技術を誇る
2節を残し、ミランが7年ぶり18回目の優勝を飾った今季のセリエA。そのなかで2位以下の大混戦を生んだ要因のひとつは、ウディネーゼの快進撃だった。
北部の地方チームにあって2年連続得点王を狙うFWディナターレの決定力はさすがだが、強敵を次々に撃破した高速カウンターの鍵を握っていたのは、加入3年目にしてブレイクしたFWアレクシス・サンチェスだ。
「Niño maravilla(ニーニョ・マラビージャ=神童)」の異名を持つこの22歳こそ、今夏、移籍市場の目玉に他ならない。
チリ北部の小さな町トコピージャで生まれ育ったサンチェスは、15歳で砂漠の町カラマのクラブ、コブレロアに入るとすぐに頭角を現した。
チリやコロンビアで精力的なスカウティングを行なうウディネーゼの目に留まったのは17歳のとき。150万ユーロ(約1億7000万円)で保有権を買い取られた後、武者修行のためコロコロやリーベルプレートといった南米の雄へレンタルに出された。そして'08-'09シーズン、イタリアへ戦場を移すと、その才能を一気に開花させた。
シュート、アシストなんでもござれ。超絶技巧のサイドアタッカー。
とにかくモノがちがう、と周囲を唸らせたのが、敵地での27節パレルモ戦だ。
サンチェスは“ポーカー(4得点)”を達成し、クラブ史に残る7ゴール圧勝の立役者となった。とりわけ、トップギアのドリブルで迫ったゴール前で、スピードを殺さず左右のダブルステップでGKをかわして叩き込んだ自身2点目は珠玉のゴールだった。
「ボールをもらった瞬間、あのトリックプレーをやってやろうとひらめいたんだ」
頭に浮かんだアイデアをそのまま実現できる超絶技巧の持ち主は、続く29節カリアリ戦でも、70mをドリブルで長駆すると再び相手守備陣を手玉に取り、1ゴール2アシストの活躍を見せた。
上背こそ168cmと小兵だが、補ってあまりあるスピードとテクニックを備え、今やセリエA最強のサイドアタッカーへと成長した。12得点(35節終了時点)という数字以上に、周囲を生かすアシスト能力やトップ下をこなすマルチタレントぶりも光る。
計り知れないポテンシャルを秘める「神童」を他のビッグクラブも放っておくはずがない。