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好発進だった斎藤&澤村の課題は、
アンバランスな投球術の修正にあり。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/05/08 08:00

好発進だった斎藤&澤村の課題は、アンバランスな投球術の修正にあり。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

4月21日の阪神戦でプロ2度目の先発マウンドに立った澤村は、ピンチの連続も変化球を効果的に使い、7回を6安打1失点に抑えてプロ初勝利を挙げた

斎藤は課題であるストレートの強化に踏み込めるか?

 斎藤の活躍はこれからも続いていくのか、というのがここからの話で、まず大学時代の成績を1~2年までの前半と3~4年までの後半に分けて見てみよう。

◇早大1~2年……18勝5敗、防御率1.15、1試合平均与四死球2.29
◇早大3~4年……13勝10敗、防御率2.47、1試合平均与四死球3.03

 ボールゾーンへの高めストレート、低め変化球で打ち取る投球術こそ斎藤の持ち味で、リーグ戦でしのぎを削ったライバルたちは2年間の戦いでその特徴がわかった。そこからの対応策とその成果は、はっきり数字になって表れている。

 プロのスコアラーの分析は大学よりも緻密だからじきに対応策を練ってくるのは確実で、斎藤と大野奨太のバッテリーもストレート勝負を増やすなど策を練っていくだろう。裏のかき合いがこれから1年間行われ、及第点と言える成績を斎藤は残すと思うが、そういう対症療法が長く続くほどプロは甘くない。

「プロでも1年目は5~10勝できると思う。問題は2年目以降その成績を維持できるかどうかということ。その予測が斎藤の場合、非常に難しい」(『2011年版 プロ野球 問題だらけの12球団』[小関順二/草思社]より)

 自著で斎藤のことを否定的に書いたのは、いつまでたっても「ストレートの強化」という根本治療に手をつけない斎藤に苛立ったからに他ならない。

「まだ直球が弱いと感じた。直球のサインよりも変化球のサインが出て、それにうなずいてしまう自分がいた。変化球に頼った方が打ち取れると感じてしまった。直球を磨かないと」

 これはロッテ戦後のコメントで好感が持てるが、斎藤は大学時代から「直球を磨かないと」という意味合いのことを言い続け、実際にはほとんど手をつけてこなかったのである。

“脱力”によって球に伸びが生まれた澤村拓一。

 澤村に話を移そう。

 大学時代の澤村は、ストレートは速いがバットには当たると言われていた時期がある。

 実際、スピードガンで150数キロと表示されながら、不思議と澤村の剛速球はミートされていた。空振りを狙って取れるようになったのは4年秋からで、ここで目立ったのが“脱力”。

 力み返って投げるのではなく、力7分くらいで楽に腕を振って投げることでストレートに伸びが生まれ、打者から空振りが取れるようになった。

 スカウトのスピードガンは初速と終速が表示されるが、155キロの初速に対して終速は146、7キロくらい。ところが初速が150キロくらいのときは終速との差が小さくなって145、6キロになる。楽に腕を振ることでボールに逆スピンがかかり、キレが増すことで空振りが取れるようになったのである。

 しかしプロ1年目の今、澤村には力み返る要素が多くある。

 エースになれる逸材という高評価とは裏腹に、「斎藤世代」と言われることで自分が否応もなく脇役に回らざるを得ない状況、そういった諸要素が澤村から“脱力”を奪っているのである。

【次ページ】 澤村は直球を活かすためのカーブを有効に使うべき。

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