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インフルエンザ騒動、“早期決着”の内情。
text by
片山良三Ryozo Katayama
posted2007/09/20 00:00
36年前の大流行のときには、9週間もの競馬開催の休止を余儀なくされたのだという。当時は「馬インフルエンザ」に対する防衛策がまったく取られていなかったため、感染がほぼ発症につながり、しかも発熱や咳などの症状も非常に重かったためだ。肺炎にまで発展して死に至った例もあったと聞く。
そのときの教訓で、サラブレッドなどの軽種馬は、1歳の春に1回目の予防接種(生ワクチン)が義務づけられ、それ以後、年に2回確実に行なわれている。今回の災難が非常に軽い被害で済んだのは、一にも二にもその過剰とも思われた防衛策が奏功したと言っていい。ものすごい勢いでウィルスが拡散したのは36年前と同じだったが、感染しても発症につながる確率は2割に満たない低い数字に抑えられ、熱が出たとしても微熱程度で済んだのだ。また、一旦罹患した馬は、体内に抗体ができたところで陽性から陰性に転じるわけだが、それにかかるスピードも速い馬なら1日、遅くとも数日で見事に立ち直った。舌を巻くようなワクチンの効果であった。