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五輪候補がひしめく柔道女子48kg級。
福見、浅見を山岸絵美が猛追する!!
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2011/04/13 10:30
谷(亮子)選手を追っていたときとの心境の差を、「焦りというのは無く、無かったからこそ、逆にマイペースにできました」と語った山岸絵美
国際大会での実績で総合的に判断するという五輪代表。
山岸は、今年に入ってからの国際大会だけを見ても不調をかこっている。
ワールドマスターズでこそ2位に入ったものの、2月の欧州遠征では肩を故障した影響もあって、グランドスラム・パリ大会は2回戦で敗退、グランプリのデュッセルドルフ大会では4回戦で敗れている。ちなみにパリで優勝したのは浅見、デュッセルドルフは福見であった。
山岸も他の選手同様、来年のロンドン五輪出場を最大の目標としている。一度の大会の結果ではなく、国際大会でのある程度長い期間をみての成績が代表選考で重視されることを考えれば、まさに崖っぷちでの優勝が今回だった。
東日本大震災の影響が大きかった福見は言い訳もせず……。
対する福見は、東日本大震災のあと、練習拠点である筑波大学の道場が震災の影響で一定期間、閉鎖となり、東京都内のコマツの道場、山梨学院大学の道場などに通って練習し、大会に臨んでいる。
つくば市内の自宅にいるときは、余震への不安から、地震で液晶画面が壊れたテレビを音だけ聞くようにして付けっぱなしにしていたという。
そうした状況で大会に臨んだことも影響はあったのではないか。
「与えられた環境の中で自分を作っていくことでもいい試練になったし、その中でいかに気持ちを高めていくかが大事ですから。そのへんがうまく一致していなかったと思います」
とは、試合後の福見のコメントである。
そして浅見。
「組み手がだめだったし、課題がいろいろあります」
と悔しさを見せ、このように大会を振り返った。
「(旗判定2-1で勝った)1回戦も負けたかなと思っていました。全試合、延長戦になることを想定していました」
48kg級は「誰が出ても世界で勝てる」と語られているように、国際大会で勝つことよりも国内で勝つのが難しい階級である。
これだけ高いレベルを維持しているのも、力の拮抗した、容易に勝つことのできないライバルたちがいるからだ。今大会の、3者のほとんど差のない戦いに、あらためてそう思えた。