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「ベルギーを後退させる力を日本は持つ」
トルシエが語るGL総括と次戦の要点。 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byAsami Enomoto/JMPA

posted2018/07/01 12:30

「ベルギーを後退させる力を日本は持つ」トルシエが語るGL総括と次戦の要点。<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

グループリーグ突破まで、その戦術的な選択で成功し続けている西野朗監督。日本一の名将として、さらなる高みを目指す……。

ラウンド16は想像できなかったはず。

――それではグループリーグを通しての日本をどう総括しますか?

「素晴らしいワールドカップだ。日本が入ったのはとても難しいグループで拮抗していた。日本がラウンド16に進めるとは誰にも想像できなかったはずだ。

 実際に勝ち点4が通過の分岐点になると、大会前から私は考えていた。難しいグループであるからこそ、4点でも取れれば日本も大丈夫だとは思っていたが……実際に獲得したのは、本当に素晴らしいことだった。

 状況を考えれば見事という他にない。

 監督交代を直前に行い、取り巻く状況は非常に微妙だったはずだ。それなのにコロンビアを破りセネガルとは引き分けた。ポーランド戦は負けたとはいえ互角以上の内容だった。

 しかもアグレッシブで攻撃的なサッカーを展開した。

 西野監督が示したのは、サッカー日本代表というチームに対して彼自身が重大な決断を下せるということだった。実際ポーランド戦で、彼は6人の選手を前の試合から代え、長谷部や本田、香川を先発に起用しないという思い切った戦術を選ぶことができたのだから」

ノックアウトステージは日本向き!?

「たしかにポーランド戦の日本は、(終盤を除けば)少しナイーブだったかも知れない。もっとリスクを冒してよかったし、ボールをもっと支配し、情熱を持ってプレーしても良かった。野心も少し強すぎた。

 ただ、リーグ戦を通して日本は自分たちのサッカーを貫いた。その点で迷いはなく、自分たちのプレーの価値によってリーグ戦突破を果たした。

 突破できたのはピッチの上でセネガルとポーランドを蹴落としたからだ。それこそが日本の素晴らしいパフォーマンスであるわけだから、西野監督には改めておめでとうと言いたい。

 私は日本がここからさらなる経験を得て欲しい。というのもノックアウトステージでは日本の哲学が役に立つだろうからだ。

 とことん勝負を決する直接対決は、日本人のメンタリティーに合っている。

 ベスト8を賭けたラウンド16は大変な試合になるだろう。ベスト8に駒を進めれば歴史的な偉業だ。しかしここまでに大きな自信を得ているから、たとえ凄く厳しくとも――イングランドもベルギーも優勝候補のひとつであるから――韓国がドイツを破ったように、快挙を成し遂げる可能性は十分にある」

【次ページ】 日本には失うものはないのだから……。

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