ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
オシムはベルギー戦をどう見るか。
「可能性は日本の方が少し高い」
posted2018/06/30 12:45
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
日本がグループリーグ突破を果たしながら、試合終盤の消極的な戦い方が論議を呼んだポーランド戦に関して、試合直後と翌日の2度にわたりイビチャ・オシムから話を聞いた。ここに掲載するのは、翌日に彼の口から語られた言葉の数々である。
彼が積極的に語ったのはベルギー戦に向けての展望であり、ポーランド戦の終盤については、私が何度も質問を繰り返してようやく重い口を開かせたのだった。
語りたくなかったところに彼の真意がある。そしてその真意は、決して否定的なものではなかった。たとえ口にしなくとも、オシムの言わんとすることは、彼の言葉の間から十分に伝わって来る。
ベルギー戦はラウンド16のベストゲーム。
――元気ですか?
「ああ、皆が満足している」
――こちら(ロシアの取材陣)もそうです。ただ日本では、試合終盤の消極的なボール回しが糾弾されています。
「もうその話は止めた方がいい。次のベルギー戦はまったく別の試合であるからだ」
――その通りですが。
「彼らを過大評価しても過小評価してもならない。まあ、選手の名前を見たときに過小評価は難しいかも知れないが。ただ過大評価は日本にとって危険だ。というのも戦いはまず頭の中で始まるからだ。それがあらゆる問題を引き起こしうる。
また休息も重要だ。今日のサッカーではフィジカルの占める割合が大きい。疲れが抜けなければそれだけで問題になる。常に万全でなければならない。どんなに優れた選手でも、走れなければ話にならない。
日本の人たちは今、大いに満足しているだろう。代表は素晴らしいイメージをロシアでも与えたのだから。
政治や経済と同様にサッカーでもあなた方はすでに多くのものを成し遂げ、これまでの幾つかの試合で違いを示してきた。それには重要な試合も、さほど重要でない試合もあったが、チームはまさに日本を代表して戦ってきた。そのメンタリティーやキャラクターを通して。そうした点を考慮しなければならない。
ベルギー戦は日本の存在を賭けた試合になるだろう。というのもメンタル面でもフィジカル面でも日本に何ができて何が可能であるかを試される試合になるからだ。もちろんサッカーの面においてもだ。すべてが満たされ、そのすべてが出し尽くされたときに、自分たちがどこに向かうべきかが初めてわかる。
ベルギーはそれだけの注意を要する相手だ。まったく異なるふたつの文化の対戦であり、異なるサッカーの対戦でもある。素晴らしい試合になるのは間違いない。ラウンド16のベストゲームになるだろう。日本はこのチャンスを決して見過ごしはしない。日本が新たな努力を始めるための絶好の機会であるからだ」