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広島が仕掛ける打順革命、思想は?
新井が5番ではなく6番に座る理由。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2017/05/29 17:30

広島が仕掛ける打順革命、思想は?新井が5番ではなく6番に座る理由。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「4番」の重責を知る新井の背中を見て、鈴木誠也は“本物の4番”になっていく。

40歳の新井の背中を見て、22歳の鈴木が学ぶ。

 打率、本塁打、打点、防御率、球速、対戦成績、守備率、勝率……と、野球は数字で表される競技だ。

 データの細分化、数値化は進む一方。スコアラーからの資料にはさまざまな数字が並ぶ。データを読み解く力だけではなく、選手の状態を見極める眼力も問われる。

 シーズン143試合。

 ひとつとして同じ試合はない。

 選手の調子やコンディションは日によって変わり、天候やチーム状態なども違う。“生き物”のように変わる中、広島は最善のオーダーを探る。

 ただ、野球には数値化できないものもある。鈴木を4番に固定する直前まで、4番新井、5番鈴木とした並びには石井コーチのメッセージが含まれていた。

「あの背中を見て感じてほしかった。FAで阪神へ移籍する以前の新井は対戦相手として見てきただけだけど、個人としては広島に復帰してからの新井の方が4番らしいと思う」

 一発長打で試合を決めるだけでなく、ときに自己犠牲を払い進塁打を放ち、ときに粘り強く四球を選ぶ――つなぎの意識を打席で示す40歳の姿勢を、22歳に学んでほしかったのだ。

 数字に縛られることなく、最善の打順を探るのは、正解のない数式を解くようなものなのかもしれない。この難解な数式に正解があるとすれば、「勝利」という答えを導き出したときだろう。

 だが石井コーチは、勝っても「これが正解だとは思っていない」と首を振る。

 連覇を達成して初めて「正解だった」と言えるのかもしれない。

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