「自分のレースを映像で振り返ると、自分の見ている景色とカメラに映っている景色はちょっと違うのかなと思いました。それを見比べるのがちょっと面白かったです。(一番違ったのは)14kmの上り坂のところで追いつくあたりが、私としては全然離れていないという感覚だったんですが、カメラの映像で見ると思ったより離れていたな、と」
過去最高のレースだったーー。そんな声も聞こえたのがパリ五輪の女子マラソンだ。過酷なアップダウンがある史上最難とも言われたコースで、徐々に選手がふるい落とされる中、世界記録保持者のティギスト・アセファ(エチオピア)、ワールドマラソンメジャーズで3連勝中のヘレン・オビリ(ケニア)、そしてこの大会で3つ目のメダルを狙う常識破りのシファン・ハッサン(オランダ)という前評判が高かった3人が最後まで残り、見るものを楽しませる鍔迫り合いを繰り広げたのだ。
そのハイレベルかつプレッシャーのかかるレースで、しっかりと存在感を見せつけたのが日本の鈴木優花だ。上り、下りを巧みに利用して先頭集団に食らいつき、終盤まで日本のマラソンファンに「メダルの可能性」を感じさせた。その知性と粘りの走りで2時間24分2秒、自己ベストタイムで6位入賞。笑顔のフィニッシュには多くの人が喝采を送った。
「35km以降、しんどくなってきて体が動かなくなってきた時にエッフェル塔が見えてきて、もうすぐだ、とは思ったんですけど、そこから3、4kmが長くて。(先頭と)離れる瞬間に自重した部分もあったので、そこで前の選手につけるか、つけないかで差が出たな、と。そこで自分がついたらリズムをもらえたかもしれないので、その瞬間の判断ができなかったのは経験不足だったなと思います」
鈴木の言葉が持つ「説得力」
今回のインタビューで改めて驚かされたのは鈴木の言葉の明晰さだ。以前からレース後のミックスゾーンなどで話を聞いており、鈴木の言葉の持つ説得力は知っていたのものの、それを確信した。自分の感覚、過去の経験、将来のヴィジョン。これらを言語化した際の言葉がとても論理的であり、「今の自分には何がわからないか」も把握した上で筋道を立てて話をしてくれるのだ。
「等身大の自分を大切にしたいです」
だからこそ、鈴木の語るこんなシンプルな言葉が、スッと胸に落ちてきた。その走りはもちろん、今後の彼女がどんなことを考えながらマラソンを走り、どんな言葉を聞かせてくれるのか、楽しみになってくるようなインタビューだった。
そのほか今回のインタビューでは以下のようなことも聞いている。
- パリ五輪のレース、メダルが頭をよぎった瞬間はいつ?
- 過酷なコースで自己ベスト。フラットなコースで走ればどれくらいのタイムが出る?
- 「最強ランナー」シファン・ハッサンの底知れなさとゴール後に話したこと
- マラソンという競技の「特異性」と42.195kmが好きな理由
- アップダウンの激しいコースでもNIKEの厚底「アルファフライ」を選ぶ理由
- 今後「トラックでのスピードを磨く」と語る深い理由
まだマラソンは4レースしかこなしていない鈴木。長距離ランナーとしての無限の可能性を冷静に分析し、情熱を持ってそれを広げようとしている。
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