記事を
ブックマークする

「ストレスで嘔吐しそうに…」“驚異の3種目メダル”超人ハッサンの知られざる葛藤…パリ五輪で田中希実に送ったアドバイスとは?《マラソン金メダル》

2024/08/20
パリ五輪・女子マラソン、ラストスパートで世界記録保持者アセファを振り切って金メダルのハッサン
パリ五輪・陸上競技を現地で取材した米国在住のライター・及川彩子さんが、独自の視点から綴ったNumberPREMIERオリジナルコラム。4年に一度の祭典で、主役となったオランダのあのランナーの凄さを掘り下げます。

 "If your dreams don't scare you, they're not big enough(あなたが恐れを感じず立ち向かうことができるなら、あなたの夢は小さすぎる)" 

 モハメド・アリの言葉だ。

 オランダのシファン・ハッサンは、パリ五輪で5000m、1万m、マラソンの長距離3種目に挑んだ。東京五輪でも彼女は1500m、5000m、1万mに挑戦し、すべての種目でメダルを獲得している。なぜ彼女は挑戦しつづけるのだろうか。

<パリ五輪 ハッサンのレーススケジュールと結果>
 8月2日 5000m予選 14分57秒65 (組2位)
 8月5日 5000m決勝(銅メダル)14分30秒61(今季自己最高)
 8月9日 1万m決勝(銅メダル)30分44秒12(今季自己最高)
 8月11日 マラソン(金メダル)2時間22分55秒(五輪新記録)

1万mで3位に入ったハッサン ©Tetsuya Higashikawa/JMPA
1万mで3位に入ったハッサン ©Tetsuya Higashikawa/JMPA

「自分がどれだけできるのか、とても興味がある」

 3種目挑戦の理由をこう話したが、同時にマラソンへの恐怖を何度も何度も口にしていた。

 マラソンへのストレスで大会前には「燃え尽き症候群」のような状態にも陥り、最終調整の一環でオランダで出場した1500mレースでは、4分04秒83の5位と凡庸なタイムで終わっている。「練習も順調に積めていたし、スピード練習も十分できていたけれど、あの日は全く噛み合わなかった。トラックとマラソンの両方の練習に根をつめすぎて、心が疲れていたのだと思う」と振り返る。

特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Ryosuke Menju/JMPA

2

0

5

前記事 次記事