パリ五輪・陸上競技を現地で取材した米国在住のライター・及川彩子さんが、独自の視点から綴ったNumberPREMIERオリジナルコラム。4年に一度の祭典で、主役となったオランダのあのランナーの凄さを掘り下げます。
"If your dreams don't scare you, they're not big enough(あなたが恐れを感じず立ち向かうことができるなら、あなたの夢は小さすぎる)"
モハメド・アリの言葉だ。
オランダのシファン・ハッサンは、パリ五輪で5000m、1万m、マラソンの長距離3種目に挑んだ。東京五輪でも彼女は1500m、5000m、1万mに挑戦し、すべての種目でメダルを獲得している。なぜ彼女は挑戦しつづけるのだろうか。
<パリ五輪 ハッサンのレーススケジュールと結果>
8月2日 5000m予選 14分57秒65 (組2位)
8月5日 5000m決勝(銅メダル)14分30秒61(今季自己最高)
8月9日 1万m決勝(銅メダル)30分44秒12(今季自己最高)
8月11日 マラソン(金メダル)2時間22分55秒(五輪新記録)
「自分がどれだけできるのか、とても興味がある」
3種目挑戦の理由をこう話したが、同時にマラソンへの恐怖を何度も何度も口にしていた。
マラソンへのストレスで大会前には「燃え尽き症候群」のような状態にも陥り、最終調整の一環でオランダで出場した1500mレースでは、4分04秒83の5位と凡庸なタイムで終わっている。「練習も順調に積めていたし、スピード練習も十分できていたけれど、あの日は全く噛み合わなかった。トラックとマラソンの両方の練習に根をつめすぎて、心が疲れていたのだと思う」と振り返る。
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photograph by Ryosuke Menju/JMPA