試練は、欧州に渡り経験と実績を積み重ねた3人の“後継者”にとっても例外ではない。出自も歩んだ道も違うが、同時期に並びたつ彼らは、母国でどのように見られているのか。
「アルゼンチンサッカーを野蛮だと言う人は、サッカーを見ないほうが良い。サッカーは、激しく点を奪い合う死闘。華麗な振る舞いや技術、ましてや顔や髪型を競う競技ではない」
'02年W杯で、シメオネが残した言葉である。
この言葉に象徴されるように、狂気とプライド、そして歴史的な背景さえピッチにもちこむのが、アルゼンチンサッカーだ。W杯では常に優勝候補と目されながら、'90年の準優勝を最後に、準決勝にも進んでいない。
マラドーナの引退後、アルゼンチン国内では毎年のように新たな救世主誕生が期待され続けて来た。それは、長年の経済危機をも解決してくれるのでは、という迷信にも近い祈りでもある。これまで新星が登場する度に「マラドーナ2世」と呼ばれ、時として、その重圧が選手の成長を妨げてきた側面もある。元祖マラドーナ2世と呼ばれたディエゴ・ラトーレにはじまり、アリエル・オルテガ、フアン・ロマン・リケルメ、パブロ・アイマール、ハビエル・サビオラ……。そして現在、最も代表的な2世として、リオネル・メッシがアルゼンチンサッカーの頂点に君臨し、カルロス・テベス、セルヒオ・アグエロが続く。
アルゼンチン国内ではメッシよりもテベスとアグエロ。
しかし、メッシの国際的な評価や知名度の一方で、アルゼンチン国内におけるテベスとアグエロの人気の高さには驚かされる。地元スポーツ紙“Olé(オレ)”は、メッシのバルセロナとテベスのマンチェスター・ユナイテッド対決となった5月のチャンピオンズリーグ決勝では、テベスを応援するアルゼンチンサポーターが圧倒的に多かったと報道している。また、現代表で最も愛されている選手として、国民の大半が“カルリートス・テベス(カルロスちゃん・テベス)”と、まるで身内を語る口調で断言するというのだ。
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