戦前から続くバスケクラブにいる青年。年長者が残したその場所で、彼は自らの可能性を模索する。いつかその答えがわかる日まで、歴史だけは見守り続ける。(原題:[ナンバーノンフィクション]サンロッカーズ渋谷「葛藤と選択の90年」)
すでに勝敗が決した最終第4クォーターの残り数秒、19歳の若者にボールが渡った。仲間からの“打てよ”というメッセージ付きのパスで、相手のプレッシャーもほとんどなかった。チームメイトも観衆も、最終盤にようやく出番を得た彼のシュートを待った。だが、彼はリングに向かうことなく、近くの味方にパスを回した。時計は、若者の迷いや逡巡を待ってくれるはずもなく、まもなくシーズン最終戦の終了を告げるブザーが鳴った。
あのとき、なぜ、シュートを打たなかったのか。
それは他者が彼に抱いたもどかしさであると同時に、プロバスケットボールプレーヤーとしての1年目を、出場時間6分3秒、無得点で終えた大森康瑛が、自分自身に突きつけた問いでもあった。
「昨シーズンの最終戦のことはよく覚えています。ボールをもらっても、そこまで自分に自信がなかったというか、ほんと、どうすればいいのか分からない状態でした」
あの一瞬の躊躇は彼がまだプロのバスケットボールプレーヤーになり切れていなかったことの象徴だったのかもしれない。チームのキャプテンであり、同じコートにいたベンドラメ礼生の言葉を聞けば、そう思えてくる。
「康瑛は頭が良いので、すごく考えてしまうんだと思います。身体が反応するというより、先に頭が動いてしまっているような気がする。僕なんか、彼くらいの年齢のときは、本能的にがむしゃらにバスケットをやっていました。もっとわがままでいいと思うんです。選択肢が多すぎるんですよ、康瑛の場合は。あんな綺麗な文武両道っていますか? 漫画でしか見たことないです」
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photograph by Tomosuke Imai
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