
9月も半ばを過ぎ、ノーザンホースパークには爽やかな北海道の秋が訪れていた。青い空。澄んで乾いた空気。エゾリスが忙しそうに走り回り、地面に落ちたどんぐりを集めている。観光客を乗せた馬車がゆっくり通り過ぎ、ポニーショーが行われている建物からは楽しそうな音が漏れてくる。
そんなパーク内の放牧地に、ウインドインハーヘアはいた。駐車場から近く、新千歳空港からのバスを降りて、まず最初にここへ立ち寄る見学客も少なくない。柵のプレートを読んだ見学客の一人が「えっ、俺の3歳上なの!?」と驚いて呟いた。
1991年にアイルランドで生まれたウインドインハーヘアは、イギリスで走り、英オークス2着など活躍。遠征で臨んだドイツのレースでGI勝ちを果たした。
引退後は繁殖牝馬となり、アメリカ・アイルランドで4頭の仔を産んだのちに日本のノーザンファームへ。ブラックタイドやディープインパクトなど13年間で12頭の仔を産み、21歳で繁殖牝馬を引退。2014年、母馬のいない仔馬の世話をする教育係として、ノーザンファームを母体とするこのノーザンホースパークへやって来た。
「健康」や「長寿」と書かれたお守りがぎっしりぶら下がる
今年、彼女は34歳を迎えた。人間で言えば120歳近くになるという。もう教育係はしておらず、ファンや観光客のための展示馬として毎日を過ごしている。
朝9時の開園にあわせて40m×50mほどの放牧地に出ると、いつも一緒にいる3頭のポニーと鼻面を合わせて挨拶を交わす。かと思うと、ごろんと横になって砂浴び。そんなルーティンを終えると、柵のところにいる見学客に自分から近づき、ファンサービスするようにカメラ目線で佇む。新しいグループが来ると、今度はそっちへ。それが延々と繰り返される。やがて11時に厩舎へ戻ってからも、見学客が来ると馬房から顔を出し、また彼女なりの対応を行う。
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※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
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