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《ディープの母を訪ねて》ウインドインハーヘア34歳、名馬を産み出す生命力は今も「母性や責任感、仲間意識のとても強い馬だなと」

2025/10/09
ノーザンホースパークで暮らすウインドインハーヘア
三冠馬・ディープインパクトの産みの親は、御年34歳を迎えた。ポニーと共に暮らし、人々に愛され、時に病とも戦いながら、生きるという意志の力を確かに、その余生を過ごしている。(原題:[偉大なる母を訪ねて]ウインドインハーヘア「名馬を産み出す生命力」)

 9月も半ばを過ぎ、ノーザンホースパークには爽やかな北海道の秋が訪れていた。青い空。澄んで乾いた空気。エゾリスが忙しそうに走り回り、地面に落ちたどんぐりを集めている。観光客を乗せた馬車がゆっくり通り過ぎ、ポニーショーが行われている建物からは楽しそうな音が漏れてくる。

 そんなパーク内の放牧地に、ウインドインハーヘアはいた。駐車場から近く、新千歳空港からのバスを降りて、まず最初にここへ立ち寄る見学客も少なくない。柵のプレートを読んだ見学客の一人が「えっ、俺の3歳上なの!?」と驚いて呟いた。

 1991年にアイルランドで生まれたウインドインハーヘアは、イギリスで走り、英オークス2着など活躍。遠征で臨んだドイツのレースでGI勝ちを果たした。

 引退後は繁殖牝馬となり、アメリカ・アイルランドで4頭の仔を産んだのちに日本のノーザンファームへ。ブラックタイドやディープインパクトなど13年間で12頭の仔を産み、21歳で繁殖牝馬を引退。2014年、母馬のいない仔馬の世話をする教育係として、ノーザンファームを母体とするこのノーザンホースパークへやって来た。

「健康」や「長寿」と書かれたお守りがぎっしりぶら下がる

 今年、彼女は34歳を迎えた。人間で言えば120歳近くになるという。もう教育係はしておらず、ファンや観光客のための展示馬として毎日を過ごしている。

 朝9時の開園にあわせて40m×50mほどの放牧地に出ると、いつも一緒にいる3頭のポニーと鼻面を合わせて挨拶を交わす。かと思うと、ごろんと横になって砂浴び。そんなルーティンを終えると、柵のところにいる見学客に自分から近づき、ファンサービスするようにカメラ目線で佇む。新しいグループが来ると、今度はそっちへ。それが延々と繰り返される。やがて11時に厩舎へ戻ってからも、見学客が来ると馬房から顔を出し、また彼女なりの対応を行う。

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photograph by Asami Enomoto

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