七月場所ではウクライナ出身の21歳・安青錦関が、11勝4敗、千秋楽まで優勝争いに絡み、土俵を大いに盛り上げてくれました。
技能賞を獲得したように、安青錦関は相手の懐に入りこみ、様々な技を繰り出す技巧派のイメージがあるかもしれませんが、その強みを支えているのは広背筋の強さです。欧州出身の力士は、背中の作りが日本人とまったく違います。安青錦関も、まるで背中に羽根が生えているかのような逞しい広背筋を生かし、徹底的に前傾姿勢を保って、前まわしを取っていくスタイルを確立しつつあります。
安青錦関は今では珍しい内無双を繰り出しますが、あの技ができるのも、前傾姿勢を保てているからだと私は見ています。相手が懐に入られたのを嫌がり、上から体重をかけてのしかかってきたところで、瞬時に無双を切る。安青錦関の場合、発達した広背筋があってこそ、どれだけ圧力をかけられたとしても前傾姿勢を保てるわけです。あの内無双は腕だけではなく、身体全体の使い方の上手さが技につながっています。おそらく無双を切らなくても、腕力と広背筋、身体の動きだけで相手を捻れる感じさえします。無双を切りながらだと捻りやすいこともあり、無双はあくまで技を出すきっかけに過ぎないはずです。
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photograph by Takayuki Ino(Illustariton)
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