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《ウクライナ出身》「格好良かった」「いつかあそこで」安青錦が見た“名勝負動画”と胸に秘める思い…安治川親方「戦争の話もしませんね」

2025/07/06
今年の三月場所、五月場所で連続敢闘賞の安青錦
戦火の故郷から1人、日本にやってきた21歳の青年がいる。家族と遠く離れても力士になるという夢を叶えるためだ。稽古に励み、上位への歩みを続ける中、胸に秘める思いとは。(原題:[ウクライナから角界へ]安青錦「海を越えた志」)

 ウクライナ中部のビンニツァ市にはヨーロッパでも有数の大きく美しい噴水がある。このウクライナで最も住みやすいとされる街で、17歳のダニーロ・ヤブグシシンは自身の未来に思いを馳せていた。

 2022年2月24日、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始。戦時下のウクライナでは18歳以上の男性は出国が原則認められない。ダニーロの18歳の誕生日は3月23日に迫っていた。

 急いでドイツ・デュッセルドルフに住む両親のもとに身を寄せ、こう覚悟を決める。

「やるなら今しかない。行かなかったら、亡くなる時、絶対に後悔する」

 ウクライナの大学への進学が決まっていたが、スマートフォンを手に、かねて親交のあった山中新大さんに「日本に行けませんか?」とメッセージを送った。そして、受け入れの了承を得ると、すぐ荷物をまとめて極東の島国に飛んだ。幼い頃からの夢である大相撲の力士になるために。

 ダニーロ、後の安青錦は運動神経に優れた少年だった。6歳から通い始めた地元の柔道クラブで、人生の転機は、ふいに訪れた。稽古が終わって帰ろうとすると、先輩たちが何かを始めたのだ。

「マットの土俵を敷いて、そこで相撲を取っていたんです。遊びみたいな感じですね。勝負が早くて、面白そうだな、やってみたいなと思いました」

 相撲という日本発祥の競技があることは知っていたものの、実際に目にしたのはこれが初めて。ウクライナがアマチュア相撲の強豪国でなければ、このような機会はなかったかもしれない。7歳の頃には自分でも相撲を取るようになった。

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photograph by Miki Fukano

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